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セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ ITニュース. 10月定例更新で発生したWinRE問題を解決する定例外更新をスキップしてもよい理由
2025年10月21日配信
執筆者:山内 和朗
Microsoftは2025年10月20日(米国時間)、Windows 11バージョン24H2/25H2およびWindows Server 2025向けに定例外(Out-of-Band)の品質更新プログラム(2025-10 OoB)をリリースしました。この更新プログラムは、10月14日(米国時間)のセキュリティ更新プログラム(2025-10 B)のインストールで発生するWinREの問題を解決するものです。再起動を要する更新プログラムであるため、代替策と問題解決の優先度を検討し、すぐに問題を解決したいときにのみインストールすることをお勧めします。
Windows 11バージョン24H2/25H2およびWindows Server 2025の2025年10月のセキュリティ更新プログラム(OSビルド26100.6899/26200.6899)をインストールすると、ローカルディスクの回復パーティションにインストールされている「Windows回復環境(Windows Recovery Environment《WinRE》」のイメージ(Recovery¥WindowsRE¥winre.wim)が問題があるイメージに更新され、その結果、WinREで起動するとUSB接続のデバイス、例えばUSBキーボードやUSBマウスが使用できなくなるという問題が確認されています(画面1)。WinREが必要になるのはトラブル発生時なので、トラブルがなければこの問題の影響に遭遇することはありませんが、トラブル時にこのWinRE問題のトラブルに遭遇することになります。
Windows 11, version 25H2 known issues and notifications|Windows message center(Microsoft Learn)
Windows Server 2025 known issues and notifications|Windows message center(Microsoft Learn)
画面1 WinRE環境でトラブルシューティングを実行しようとしても、USBマウスとUSBキーボードが使えないと、この先に勧めない
この問題は、以下のWindowsのバージョンとビルドのWinRE環境に影響します。なお、回復パーティションに十分な空き領域がない場合は、WinREのイメージの更新はスキップされるため影響ありません。
USBキーボードとUSBマウスしか入出力デバイスがない場合は、WinREでトラブルシューティングを行おうとしても、メニューの選択ができないため、電源ボタンを押して停止することしかできなくなります。なお、ノートPC標準のキーボードやトラックパッド、トラックポイントの操作には影響しないことを確認しました。タッチスクリーンの操作にも影響しないでしょう。また、Hyper-Vなどの仮想マシン(VM)環境の場合も、入出力デバイスはUSBデバイスではないため影響しません。
Microsoftはこの問題を解決する定例外の品質更新プログラム「KB5070773」(OSビルド26100.6901/26200.6901)を20日(米国時間)にリリースしました。Windows 11に対してはオプションの更新プログラムとしてWindows Updateを通じて提供され、自動インストール(「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する:オン」の場合)または「ダウンロードとインストール」を選択することでインストールできます(画面2)。Windows Server 2025については、Windows Updateでは提供されないため、必要な場合はMicrosoft Update Catalogからダウンロードすることが可能です。
Windows 11バージョン24H2/25H2:
October 20, 2025—KB5070773 (OS Builds 26200.6901 and 26100.6901) Out-of-band|Support(Microsoft)
Windows Server 2025:
October 20, 2025—KB5070773 (OS Build 26100.6901) Out-of-band|Support(Microsoft)
画面2 Windows 11の場合はオプションの更新プログラムとしてKB5070773をインストールできる。「利用可能になったらすぐに最新の...:オン」の場合は、自動インストールされる。Windows Server 2025向けはMicrosoft Updateカタログでの提供のみ
問題のあるWinRE.wimのバージョンは「10.0.26100.6891」、問題が修正されたWinREのバージョンは「10.0.26100.6901」です。WinREのバージョンは稼働中のWindowsのOSビルドではなく、回復パーティション内のWinRE.wimイメージの中のOSバージョンであることに注意してください。リビジョン番号が「.6891」より小さい場合は、回復パーティションの空き領域の問題などが原因でWinRE.wimが更新されていません。
稼働中のWindowsから回復パーティション内のWinREのバージョンを確認する方法については、2024年8月のブログ「ITニュース. WinREの更新失敗の既知の問題、本当に解消したの?」で説明しました。以下のスクリプトは、確認のための一連の操作をPowerShellスクリプトで記述したものです。
日本語版WindowsでWinREのバージョンを確認するPowerShellスクリプト(プレーンテキストはこちら)
WinREのバージョンを確認するPowerShellスクリプト、言語環境非依存(プレーンテキストはこちら)
画面3 PowerShellでローカルのWinRE.wimのバージョンを確認するスクリプト
WinREは、デバイスが複数回起動に失敗した場合に自動開始されます。また、稼働中の状態から「Shift」キーを押しながら再起動操作をするか、管理者として開いたPowerShellで「reagentc /boottore; Restart-Computer」を実行して再起動すると、WinREで起動することができます。2025-10 Bの問題は、WinREで起動したときに“USB接続”のキーボードやマウスが使用できないことです。前述したように、ノートPCであれば標準のキーボードやトラックパッド、トラックポイント、タッチスクリーンの操作は可能です。影響があるのは、入出力デバイスが“USB接続だけ”の環境です。
WinREは回復パーティション以外からも起動できます。例えば、WindowsやWindows Serverのインストールメディア(USBメモリやDVDメディア)や、過去に作成したシステム修復ディスクや回復ドライブがあれば、それらを使用してデバイスを起動し、WinREを起動することができます(画面4)。いずれかの(WinREを含む)起動可能メディアがあるなら、KB5070773をインストールする必要はないでしょう。問題の解決は、11月(2025-11 B)のセキュリティ更新プログラム(累積更新プログラムなのでKB5070773の内容を含む)のときまで先延ばしして問題ないはずです。
KB5070773は通常の品質更新プログラム(BリリースやDリリース)と同様の累積更新プログラムです。KB5070773はWinREの問題だけを解決するものですが、インストールには再起動が要求されますし、Microsoft Updateカタログからダウンロードするとなると、約3.3GBものダウンロードが必要です。そして、インストールと再起動にも、通常の品質更新プログラムと同じだけの時間を要します。回避策でなんとかなる問題に、それほどの時間とネットワーク帯域を使用するはもったいないです。また、サーバーの場合、いつでも再起動できるわけではありません。
画面4 Windows 11のインストールメディア(2025年9月以前のメディア)でデバイスを起動して、「PCを修復する」を選択すると、問題のないWinREを起動できる