セイテクエンジニアのブログ 製品コラム VMのV2V移行、移行前と移行後で何が変わるの?-SSD-assistance活用例
2024年10月09日配信
2024年10月09日更新
執筆者:セイ・テクノロジーズ エバンジェリスト
2024年9月10日にオンライン開催された「セイテク・シス管道場 第2回オンプレの仮想化基盤をHyper-Vへ、格安乗り換えツアー(→アーカイブ)」では、専用の移行ツールやサービスを使用せずに、VMware仮想マシン(VM)をHyper-V VMにV2V(Virtual to Virtual、仮想-仮想)変換して移行する方法が解説されました。その中で、移行前のVMのシステム設定の収集と、移行前後のシステム設定の差異を見るために、弊社のサーバー設定仕様書自動生成サービス「SSD-assistance」が紹介されました。SSD-assistanceのサーバー設定仕様書は、設定仕様書というドキュメントの自動作成による工数削減と、フォーマットの統一に役立つのはもちろん、仮想化プラットフォームの切り替えに伴うVMの情報収集や移行前後のシステム設定の変更部分の把握に一役立ちます。
物理環境では、Windows ServerやLinuxを実行している物理サーバーのハードウェアが、ある日を境に全く異なるものに入れ替わるということは通常ありません。Windows Serverや商用LinuxのOSライセンスは、通常、物理サーバーハードウェア(プロセッサなど)に割り当てられます。故障による交換はあるかもしれませんが、ほとんどの場合、ライセンスに紐づけられたハードウェアがまったく異なるものに入れ替わることはないでしょう(OEMライセンスは別のハードウェアに移行することはできませんが、そうでない場合は、条件を満たせば別のハードウェアに移行できる場合があります)。
仮想環境では、VMをホストしている仮想化プラットフォームが別のものに入れ替わると、VMのハードウェア構成がまったく別のものになります。もちろん、ある仮想化プラットフォームのVMを、そのまま別の仮想化プラットフォームに移動/コピーしたとしても、VMとして実行することはできません。仮想化プラットフォームの移行では、VMをV2Vにより、移行先の仮想化プラットフォームに合わせて変換して移行する必要があります。
例えば、VMware VMをV2VでHyper-Vに移行した場合、移行前の(仮想)ハードウェアは製造元「VMware, Inc.」のモデル「VMware20,1」ですが、移行後は製造元「Microsoft Corporation」のモデル「Virtual Machine」に変わります(画面1)。そのような変更はシステムにほとんど影響しないでしょう。このように器が変更になっても、システム設定の大部分は変更なしでV2V移行できるはずです。
画面1 VMware(画面左)からHyper-V(画面右)にV2V移行したWindows Serverの前後のシステム構成
しかし、異なるディスクコントローラー、異なるネットワークアダプター(NIC)がシステム設定に影響するかもしれません。仮想化プラットフォームが変わることで、最適化のためのゲストコンポーネントも変わってきます。また、移行のタイミングでリソース割り当てを作業者担当者個人の考えで見直して、プロセッサ数やメモリ数を意図的に変更することもあるでしょう。その作業者担当者が変更内容を情報共有しない限り、なぜ移行のタイミングでリソース割り当てが変わってしまったのかという謎だけが残るのは問題です。
そして、V2V移行後は、以前のVMと全く同じようにネットワーク上で振る舞うことが期待されますし、その必要があります。場合によっては、同じMACアドレス、同じIPアドレスに確実になるように考慮し、短時間で移行元のVMをネットワークから切断し、移行先のVM環境をオンラインにする必要があるでしょう。
V2V移行で重要なことは、移行前の(仮想)ハードウェアを含めたシステム設定の情報を収集し、V2V移行による影響を洗い出し、移行後の違いを吸収することです。それには、仮想化プラットフォームが提供する管理ツール(VMwareであればvSphere Clientなど)を使用して、VMのハードウェア構成やリソース割り当てを調査し(画面2)、ゲストOSに直接アクセスしてシステム設定の情報を収集する必要があるでしょう。ゲストOSの情報の取得方法は、ゲストOSの種類(WindowsやLinux)によって大きく異なります。Linuxゲストのの場合はディストリビューションによっても変わってくるため、ある程度のOSの専門的な知識や、操作方法の知識が要求されます。
画面2 V2V移行対象のVMに仮想化プラットフォームの管理ツールやゲストOSにアクセスして、移行に必要な情報を収集する
サーバー設定仕様書自動生成サービス「SSD-assistance」は、V2V移行のための情報収集に大いに役立ちます。Windows Serverの場合は実行ファイルを1つ実行するだけ、Linuxの場合はリモート情報採取ツールをWindowsで実行して、リモートのLinuxに接続するための情報を入力して情報採取するだけです。情報採取ツールで取得したデータは、SSD-assistanceのSaaSサービスにアップロードするか、または設定仕様書生成ツールに渡して、仕様書のデザインを選択するだけで、Excel(.xlsx)形式の「サーバー設定仕様書」が自動生成されます(画面3、画面4)。SSD-assistanceは、Windows Server 2012 R2以降のWindows Server、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、CentOS、Alma Linux、Rocky Linux、Ubuntuの広範囲のバージョンに対応しており、OSの違い、Linuxディストリビューションやバージョンの違いの影響を受けずに、誰でも簡単に情報収集することができます。
画面3 Windows用の情報採取ツール(画面左)とSaaS版SSD-assistanceのアップロードサイト(画面右)、仕様書の生成には、デスクトップ版の仕様書生成ツールを使用する方法もある
画面4 自動生成されたWindows(画面奥)とLinux(画面手前)のサーバー設定仕様書
SSD-assistance 設定仕様書出力サンプルPDF|カタログセンター|SAY Technologies
なお、現在のSSD-assistanceでは、セキュアブート、BIOSモード(BIOS/UEFI)、TPMの有無など、ハードウェアのセキュリティ設定の一部の情報については収集されないため、サーバー設定仕様書にこれらの情報は含まれません。そのため、V2V移行前に仮想化プラットフォームの管理ツールや、ゲストOSでの調査が必要です。Windowsゲストであれば「msinfo32.exe」、Linuxゲストであれば「/sys/firmware/efi」の有無や「dmesg」の出力などです。詳しくはセミナーアーカイブ(→アーカイブ)をご覧ください。
Windowsのサーバー設定仕様書については、2つの時点の情報採取データから「差分比較リスト」を自動生成させることができます。V2V移行前と、V2V移行後のそれぞれで情報を採取して比較することで、V2V移行前後の変更点を洗い出すことができます。例えば、VMのハードウェアはVMwareからMicrosoftに変更されます(画面5)。また、VMwareのゲストコンポーネントであるVMware Toolsがアンインストールされ(V2V対応の移行ツールを使用しない場合、移行のどこかのタイミングで、マニュアルでアンインストールする必要があります)、代わりにOS(WindowsおよびLinux)に組み込まれたHyper-Vのコンポーネントが動作し、Hyper-V上で最適化されます(画面6)。この他、ディスクコントローラーやネットワークアダプター(NIC)の変更が、ボリューム構成やネットワークの接続性に影響していないかどうか(例えば、IPアドレスが変更されていないかなど)、差分比較リストを使用することで、変更された部分だけを効率的に調査することができます。
画面5 差分比較リストによるV2V移行前後のシステム構成/設定の比較。H列が移行前、I列が移行後
画面6 VMwareのゲストコンポーネント(VMware Tools)はアンインストールされ、代わりに、OS組み込みのHyper-Vのゲストコンポーネントが動いている
SSD-assistanceは2018年にリリース後、当初のWindowsやLinuxといったサーバーOSだけでなく、VMware ESXiやAmazon Web Services(AWS)に対応し、サービスを拡充してきました。2024年8月には、リリース当初から多数のご要望をいただいていたネットワーク機器への対応の第一弾として、フォーティネット社の次世代ファイアウォール(NGFW)「FortiGate」に対応した「SSD-assistanceファイアウォール版」の提供を開始しました。
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