
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.98 ADクライアント管理のために、Entraハイブリッド参加環境を構築(後編)|はじめてのIntune(9)
2025年04月07日配信
2025年04月23日更新
執筆者:山内 和朗
この連載の「はじめてのIntune」シリーズでは、「Windows Server Update Services(WSUS)」の代替ソリューションとしてのMicrosoft Intune(以下、Intune)を評価しています。前回(vol.97)は、Microsoft Entra Connectをインストールして、オンプレミスのActive DirectoryドメインとEntraテナントを同期しました。今回は、Entraハイブリッド参加の構成です。
Microsoft Entra Connectをインストールしたメンバーサーバー(またはドメインコントローラー《非推奨》)にドメイン管理者としてログオンし、デスクトップまたはスタートメニューから「Azure AD Connect」を開始します。「Microsoft Entra Connect同期」ウィザードが開くので、「Microsoft Entra Connect Syncへようこそ」のページで「構成」ボタンをクリックします(画面1)。
画面1 「Microsoft Entra Connect同期」(Azure AD Connect)ウィザードを開始し、「ようこそ」のページで「構成」ボタンをクリックする
「追加のタスク」のページが開くので、「デバイスオプションの構成」を選択して、「次へ」をクリックします(画面2)。
画面2 「デバイスオプションの構成」を選択する
「概要」のページで「次へ」ボタンをクリックし、「Microsoft Entr IDに接続する」のページで、Entraテナントのグローバル管理者の資格情報を入力し、「次へ」ボタンをクリックしてEntraテナントにサインインします。
「デバイスオプション」のページで「ハイブリッドMicrosoft Entra ID参加の構成」を選択し、「次へ」ボタンをクリックします(画面3)。
画面3 「ハイブリッドMicrosoft Entra ID参加の構成」を選択する
「デバイスのオペレーティングシステム」のページで「Windows 10以降のドメインに参加しているデバイス」をチェックし、「次へ」ボタンをクリックします(画面4)。
画面4 「Windows 10以降のドメインに参加しているデバイス」をチェックする
「SCPの構成」のページで、Active Directoryのフォレストを選択し、認証サービスとして「Microsoft Entra ID」を選択して、エンタープライズ管理者に、Active Directoryドメインのドメイン(エンタープライズ)管理者(Domain Adminsのメンバー)の資格う情報を追加して、「次へ」ボタンをクリックします(画面5)。
画面5 Active Directoryのフォレストをチェックし、認証サービス「Microsoft Entra ID」と、ドメイン管理者の資格情報を入力する
「構成の準備完了」のページで「構成」ボタンをクリックします(画面6)。
画面6 「構成」ボタンをクリックして、Entraハイブリッド参加の環境を構成する
正常に構成されると「構成が完了しました」と表示されるのですが、「このディレクトリではディレクトリが有効になっていますが、まだ実施されていません。ディレクトリ同期の準備が整うまでお待ちください」と表示されました(画面7)。しばらく時間を置いてから、「再試行」ボタンをクリックしても状況は変わりません。
画面7 Microsoft Entra Connectの構成を完了できない
Microsoft 365管理センター(https://admin.microsoft.com/)の「設定 > ドメイン」を開き、追加したカスタム度ドメインの状態を確認すると、“セットアップ未完了”と表示されていることに気付きました(画面8)。
画面8 Microsoft 365管理センターではカスタムドメインの状態が“セットアップ未完了”となっていた。「セットアップを続ける」をクリックして、必要な手順を確認すると...
「セットアップを続ける」をクリックすると、Microsoftの特定のURLに対するCNAME(別名)レコード「enterpriseregistration.<カスタムドメイン名>」および「enterpriseenrollment.<カスタムドメイン名>」を、カスタムドメインをホストするDNSゾーンに登録する必要があることがわかりました(画面9)。DNSゾーンにCNAMEレコードの登録を行い、nslookupコマンドやResolve-DnsNameコマンドレット、またはMicrosoft Intune管理センター(https://intune.microsoft.com/)の「Windows > 登録 > CNAME検証」で確認した後、「続行」ボタンをクリックすると、2つのCNAMEレコードの状態が“OK”となり、カスタムドメインの状態が“正常”になりました。その後、「Microsoft Entra Connect」の構成を再実行(再試行ではなく、いったん終了して再実行)したころ、構成を完了させることができました(画面10)。
画面9 Entraハイブリッド参加サポートのために、カスタムドメインのゾーンに登録が必要な2つのCNAMEレコード
画面10 「Microsoft Entra Connect同期」を使用して「デバイスオプションの構成」を再実行すると、今度は構成が完了した
Entraハイブリッド参加のためには、さらに、ドメインのグループポリシーを使用して、WindowsデバイスのIntuneへの自動登録を許可する必要があります。それには、GPO(グループポリシーオブジェクト)を作成し、「コンピューターの構成¥ポリシー¥管理用テンプレート¥Windowsコンポーネント¥MDM¥既定のAzure AD資格情報を使用して自動のMDM登録を有効にする」ポリシーを「有効」にして、使用する資格情報の種類として「ユーザー資格情報」を指定します(画面11)。このGPOを、セキュリティフィルターなどを使用して(ユーザーのグループなど)、対象のユーザーに適用します。
画面11 グループポリシーを使用して、MDM自動登録ポリシーを有効にする
テストのために、Active Directoryのメンバーとして、それぞれWindows 10 Proバージョン22H2、Windows 11 Proバージョン23H2、Windows 11 Proバージョン24H2を実行する仮想マシン(VM)を用意しました。Entraハイブリッド参加を有効にしたあと、VMを起動して、グループポリシーを有効にした、かつIntune関連のライセンス(Enterprise Mobility+Security E3およびWindows 10/11 Enterprise E3)を割り当てたドメインユーザーでドメインにログオンすると、各VMのエディションはEntraハイブリッド参加前と同一バージョンのEnterpriseエディションに切り替わり、「dsregcmd /status」コマンドの実行結果は、Entraハイブリッド参加の状態(AzureAdJoinedとDomainJoinedの両方がYES)であることを示していました(画面12)。なお、Enterpriseエディションへのアップグレードは、ユーザーにWindows 10/11 Enterprise E3ライセンスの割り当てがない限り行われません。
画面12 Entraハイブリッド参加有効化前(画面左)と有効化後(画面右)のエディションと参加状態の違い
IntuneにEntraハイブリッド参加により自動登録されたWindowsデバイスは、Microsoft Intune管理センターの「デバイス > プラットフォーム別 > Windows」で確認することができます(画面13)。Intuneにデバイスが登録されれば、「Windows 10以降向け更新リング」(旧Windows Update for Business《WUfB》のIntuneによる管理)などを使用して、更新プログラムやセキュリティ設定をIntuneで管理できるようになります。
画面13 INTUNECL01はEntra参加デバイス、INTUNECL02~04の3台はEntraハイブリッド参加デバイス
Entraハイブリッド参加では、オンプレミスのActive Directoryドメインユーザーに対して、Microsoft 365などのクラウドアプリへのシングルサインオン(SSO)、条件付きアクセスによるリソースの保護、Windows Hello for Business(MFAのセットアップと生体認証またはPINによるサインイン)を使用して認証を強化するように構成することもできます。例えば、Windows Hello for Businessを使用するには、Intune管理センターの「Windows > 登録 > Windows Hello for Business」から簡単に有効化できます(画面14、画面15)。
画面14 すべてのユーザーに対して、Windows Hello for Businessを有効化する
画面15 Windows Hello for Businessを有効にすると、MFAのセットアップのためにアカウントの確認(再サインイン)が要求され、次回サインイン時にWindows Hello for Businessのセットアップ(PINの設定)が始まる。なお、MFAセットアップおよびPINによるサインインには、ユーザー名@<代替UPNサフィックス>の資格情報を使用する必要がある(ユーザー名@ADドメイン名を使用した場合、KDC証明書の検証に失敗するので注意)
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