
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.110 IntuneでAdobe Acrobat Reader DCを展開する2つの方法|はじめてのIntune(21)
2025年06月05日配信
2025年06月05日更新
執筆者:山内 和朗
「はじめてのIntune」シリーズでは、「Windows Server Update Services(WSUS)」の後継としてのIntuneを評価してきましたが、Intuneには管理対象のマルチプラットフォームデバイスに対してアプリを配布する機能もあります。「Adobe Acrobat Reader DC(64ビット)」を例に、Windowsデバイスに自動展開する2つの方法を紹介します。
Intuneでは、管理対象のWindowsデバイスのWin32デスクトップアプリケーション(Win32アプリ)の管理が可能です。IntuneのWin32アプリ管理機能を利用すると、組織でWindowsデバイス上のWin32アプリをインストール、構成、保護、監視ができます。この機能は、Windws 10バージョン1607 Pro以上のエディションを実行する、ワークプレース参加デバイス(個人所有デバイス)、Entra参加デバイス、またはEntraハイブリッド参加デバイスで利用できます。
IntuneのWin32アプリ管理機能では、管理者がWin32アプリのインストーラー(.exeや.msi)をIntuneのパッケージ形式(.intunewin)に変換して、Intune(Azure)のクラウドストレージにアップロードします。管理対象のデバイスは、そのクラウドストレージからパッケージをダウンロードし、定義済みのインストールコマンドを実行してWin32アプリをインストールします。
今回は「Adobe Acrobat Reader DC(64ビット)」をWindowsデバイスに展開してみます。再配布用のインストーラーは、以下のサイトからダウンロードを申し込むことができます。ダウンロードページでは、オペレーティングシステム「Windows 11」、言語「All Lauguages(MUI)」を選択し、バージョンのリストから64ビット版(Reader <バージョン> MUI for Windows-64bit)を選択してダウンロードしてください(画面1)。なお、言語「japanese」を選択すると、32ビット版のインストーラーしかダウンロードできないので注意してください。
Adobe Acrobat Readerの一括配布|Adobe Acrobat(adobe.com)
画面1 言語「All Lauguages(MUI)」を選択し、64ビット版のインストーラーをダウンロードする
次に、ダウンロードしたインストーラー(.exe)をIntuneのパッケージ形式(.intunewin)に変換して準備します。それには、以下のURLからダウンロードした「Win32コンテンツ準備ツール(intuneWinAppUtil.exe)」を使用します。任意の場所に一時フォルダー(例: C:¥work¥AcroRdr)を作成し、そのフォルダーにインストーラー(.exe)をコピーしたら、PowerShellウィンドウまたはコマンドプロンプトから「intuneWinAppUtil.exe」を実行して、ソースフォルダー(source folder)、出力フォルダー(output folder)、カタログフォルダー(catalog folder)のすべてにこの一時フォルダーのパスを指定し、セットアップファイル(setup file)にインストーラー(.exe)のパスを入力して、Intuneパッケージを作成します(画面2、画面3)。
microsoft/Microsoft-Win32-Content-Prep-Tool(github.com)
画面2 「Win32コンテンツ準備ツール(intuneWinAppUtil.exe)」を実行して、一時フォルダーと一時フォルダー内にコピーしたインストーラー(.exe)のファイル名を指定
画面3 Intuneにアップロード可能なIntuneパッケージ(.intunewin)の準備ができた。Intuneにアップロードするのは、このIntuneパッケージのみ。
Win32アプリのパッケージを準備したら、Microsoft Intune管理センターの「アプリ > プラットフォーム > Windows」を開き、「Windows|Windowsのアプリ」の「+作成」をクリックして、アプリの種類「Windowsアプリ(Win32)」を選択します(画面4)。
画面4 「Windows|Windowsのアプリ」の「+作成」をクリックして、アプリの種類「Windowsアプリ(Win32)」を選択する
「アプリの追加」の「① アプリ情報」タブでアプリの名前や説明、発行元、バージョンなどの情報を入力し、「② プログラム」タブで「フォルダー」アイコンをクリックして、先ほど準備しておいたIntuneパッケージのファイル(.intunewin)を選択します(画面5)。
画面5 事前に準備しておいたIntuneパッケージのファイル(.wintunewin)を選択する
「② プログラム」タブで「インストールコマンド」「アンインストールコマンド」に、インストーラーが元々備えている無人インストール/アンインストール用のコマンドラインを入力します(画面6)。ここで指定するべきコマンドラインはインストーラー(.exeや.msi)の情報に基づいて自動的に設定される場合もありますが、Adobe Acrobat Reader DCの場合はマニュアルで入力する必要がありました。インストーラーの種類(.exeや.msi)やアプリケーションによって異なるため、事前に仮想マシン(VM)環境などでテストして確定してください。今回の64ビット版Adobe Acrobat Reader DCの場合は、次のように設定しました。アンインストールコマンドは、事前にテストしたVMのレジストリ「HKEY_LOCAL_MACHINE¥SOFTWARE ¥Microsoft¥Windows¥CurrentVersion¥Uninstall¥<アプリケーションのGUID>¥UninstallString」の値に「/q」(UIなし)を追加したものです。
インストールコマンド | AcroRdrDXx64<バージョン>_MUI.exe /sAll /rs /msiEULA_Accept-YES |
アンインストールコマンド | MsiExec.exe /I{AC76BA86-1041-1033-7760-BC15014EA700} /q |
画面6 インストーラーが備えている無人インストール/アンインストールコマンドを設定する
「④ 必要条件」タブでは、オペレーティングシステムのアーキテクチャとして「64ビット」を、最小オペレーティングシステムとして「Windows 11 21H2」を指定しました。また、「④ 検出規則」タブでは手動で規則を構成し、「C:¥Program Files¥Adobe¥Acrobat DC¥Acrobat」に「Acrobat.exe」ファイルが存在することを条件にしました(画面7)。検出規則の条件に一致する場合、Intuneはインストールが成功したと判断させようと思います。
画面7 検出規則として、「Acrobat.exe」ファイルの存在を条件にする。この条件を満たせば、インストール成功と評価されることになる
「⑦ 割り当て」タブでこのアプリを割り当てるグループを選択し、「⑧ 確認と作成」タブで「作成」ボタンをクリックすると、Intuneパッケージのアップロードが始まります(画面8)。アップロードが完了すれば、アプリの展開準備がすべて整いました。アプリの各種設定の変更は、アップロード完了後に行えるようになります。
画面8 アプリを作成すると、Intuneパッケージ(1.32GB)のアップロードが始まる
しばらくすると、アプリを割り当てたWindowsデバイスにAdobe Acrobat Reader DC(64ビット)が自動的にインストールされ利用可能になりました。アプリの展開状況は、Microsoft Intune管理センター「アプリ|アプリ名|デバイスのインストール状態」から確認することができます(画面9)。
画面9 Win32アプリの展開状況を確認する。情報が反映されるまでには、しばらく時間がかかることに留意
Intuneを使用すると、Microsoft Storeで提供されるストアアプリをWindowsデバイスに展開、監視することができます。ストアアプリをデバイスやユーザーに割り当てると、インストール後もMicrosoft Storeを通じて最新の状態に維持されます。
Microsoft Storeでは、一部のWin32アプリケーションの最新バージョンのインストールが可能になっています。Adobe Acrobat Reader DCもその1つです(更新には対応していません)。Microsoft StoreからのWin32アプリの展開は現在、プレビュー段階ですが、Intuneパッケージを使用する従来の方法よりも簡単です。
Windowsデバイスに対して、Microsoft StoreからAdobe Acrobat Reader DC(ストアアプリのURL)をインストールするように設定するには、Microsoft Intune管理センターの「アプリ > プラットフォーム > Windows」を開き、「Windows|Windowsのアプリ」の「+作成」をクリックして、アプリの種類「Microsoft Storeアプリ(新規)」を選択します(画面10)。次に、「Microsoft Storeアプリ(新規)を検索する」をクリックして、「Adobe Acrobat Reader DC」を選択します(画面11)。あとは、このアプリを展開するデバイスまたはユーザーのグループを選択して、アプリを追加すれば完了です。この方法の場合、インストールコマンドやアンインストールコマンド、必要条件、検出条件といった詳細な設定は必要ありません。
画面10 「Microsoft Storeアプリ(新規)」を選択する
画面11 Microsoft Storeを検索し、「Adobe Acrobat Reader DC」を選択する
Adobe Acrobat Reader DC(64ビット)をWindowsデバイスにインストールする方法として、Intuneパッケージを使用する方法と、Microsoft Storeからインストールする方法の2つを紹介しました。これらは、インストールの方法が異なるだけで、インストール後の環境は基本的に同じです。ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリなど通常のストアアプリとは異なり、Microsoft StoreからインストールされたAdobe Acrobat Reader DC(64ビット)は、Microsoft Storeによって更新されることはありません。
Win32アプリの更新は、Adobe Acrobat Reader DC(64ビット)の場合、アプリ自身が備える自動更新機能(既定で有効、設定UIなし)によって行われます。アプリによっては、更新バージョンに置き換えるためのIntuneパッケージを作成して展開することで、アプリの更新することもできるでしょう。
最後に、Intuneで展開するWin32アプリのクライアントへのダウンロードは、Microsoft Storeからのストアアプリのダウンロードと同様に、Microsoft Connected Cache for Enterprise&Educationのキャッシュ対象になります(画面12)。Microsoft Connected Cache for Enterprise&Educationについては、以下の連載記事をご覧ください。
vol.76 オンプレミスWSUSの代替になるか? Microsoft Connected Cache for Enterprise(Preview)をプレビュー|Windows Server 2025大特集(13)
画面12 Intuneで展開するWin32アプリは、Microsoft Connected Cache for Enterpriseのキャッシュ対象
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