
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.122 拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)の管理|Azure Update Managerでサーバー更新管理(11)
2025年07月17日配信
2025年07月17日更新
執筆者:山内 和朗
今回は、Windows ServerとSQL Serverの「拡張セキュリティ更新プログラム(Extended Security Updates《ESU》)の話題を取り上げます。ESUは製品サポート終了後も最大3年間、セキュリティ更新プログラムを受け取れるサービスです。ESUもWindows Serverのホットパッチと同様に、Azure Update Manager(必須ではありません)やAzure Arcが関係してきます。
Windows Server 2016は2027年1月12日に、SQL Server 2016は2026年7月14日に、延長サポートが終了し、製品のライフサイクルが終了します。これらの環境を運用している場合、1年後には何らかの対応を迫られることになります。ESUは、OSのアップグレードやサーバーのリプレースができない場合の残された対応策(猶予策)です。オンプレミスの物理/仮想インスタンスをAzureにリフト&シフトすれば、最大3年間、ESUのセキュリティ更新プログラムが無料で手に入ります。オンプレミスに設置したまま、Azure Arc(従量課金)または年ごとの契約(要ソフトウェアアシュアランス)でESUのセキュリティ更新プログラムを有料で入手することもできます。
拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)は、特定のレガシバージョンのMicrosoft製品のサポート(延長サポートフェーズ)終了後に、最大3年間、セキュリティ更新プログラムを受け取れるサービスです。このサービスは、長期的なものではなく、サポートされている新しいプラットフォーム(OSのアップグレード、サーバーのリプレース、クラウドへの移行など)に移行するまでの暫定措置として提供されるもので、Windows ServerおよびSQL Serverのバージョン2008/2008 R2の製品サポート終了に併せて始まりました。
Windows Serverに対しては、Microsoft Security Response Center(MSRC)による評価で緊急(Critical)または重要(Important)なセキュリティ問題に対する修正プログラムが提供されます。SQL Serverに対しては、緊急(Critical)のセキュリティ問題に対する修正プログラムが提供されます。
なお、クライアントOS向けには、過去にWindows 7に対して企業向けESUが提供されました。2025年10月14日に製品サポートが終了するWindows 10バージョン22H2向けには企業および個人向けESU*1が提供される予定です(Windows 8/8.1向けにESUは提供されませんでした)。こちらも、緊急(Critical)または重要(Important)なセキュリティ問題に対する修正プログラムが提供されます。
*1 Windows 10の拡張セキュリティ Updates (ESU) プログラム|Windows(Microsoft Learn)
Windows ServerとSQL Serverの拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)提供スケジュール
製品 | 延長サポート終了日 | ESU 1年目終了日 | ESU 2年目終了日 | ESU 3年目終了日 | 対象 |
Windows Server 2008/2008 R2*2 | 2020年1月14日 | 終了済 | 終了済 | 終了済 | 緊急、重要 |
Windows Server 2012/2012 R2*3 | 2023年10月10日 | 終了済 | 2025年10月14日 | 2026年10月13日 | 緊急、重要 |
Windows Server 2016*4*9 | 2027年1月12日 | (2028年1月13日) | (2029年1月9日) | (2030年1月8日) | 緊急、重要 |
SQL Server 2008/2008 R2*5 | 2020年1月14日 | 終了済 | 終了済 | 終了済 | 緊急 |
SQL Server 2012*6 | 2022年7月12日 | 終了済 | 終了済 | 2025年7月8日 | 緊急 |
SQL Server 2014*7 | 2024年7月9日 | 2025年7月8日 | 2026年7月14日 | 2027年7月12日*10 | 緊急 |
SQL Server 2016*8*9 | 2026年7月14日 | (2027年7月13日) | (2028年7月11日) | (2029年7月10日) | 緊急 |
*2 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/windows-server-2008
*3 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/windows-server-2012
*4 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/windows-server-2016
*5 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/microsoft-sql-server-2008
*6 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/microsoft-sql-server-2012
*7 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/sql-server-2014
*8 https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/sql-server-2016
*9 Windows Server 2016とSQL Server 2016のESUの終了日は未発表)
*10 製品サポート終了日およびESUの終了日は通常、第2火曜日ですが、2027年7月12日(月)に設定されている理由は不明です。
現在提供中のWindows Server 2012/2012 R2のESUは、「月次ロールアップ(Monthly Rollup)」して毎月第2火曜日(米国時間)にリリースされています。*11 Windows Server 2016についても、同様に「Windows Server 2016の累積更新プログラム(Cumulative Update)」として毎月リリースされることになるでしょう。
*11 Windows 8.1 and Windows Server 2012 R2 update history|Support(Microsoft)
SQL Server向けのESUの更新プログラムは、緊急(Critical)のセキュリティ問題に対する修正のため、不定期にリリースされます。現在提供中のSQL Serverの場合、SQL Server 2012向けに2023年2月にKB5021123*12 がリリースされました。SQL Server 2024向けにはまだリリースされていません。
*12 https://support.microsoft.com/help/5021123
Azure VMおよびAzure Local上のVMの場合、ESUが提供されているバージョンのWindows ServerやSQL Serverを実行するVMには、通常のWindows Updateを通じてESUが提供されます(画面1)。ESUを受け取るために追加の設定は何も必要ありません。Azure VMではAzure Update Managerの利用が無料なので、もちろんAzure Update Managerで更新管理をすることもできます(画面2)。
画面1 Windows Server 2012 R2のESUは月次ロールアップとしてWindows Updateで入手できる。SQL Server 2012のESUも、Microsoft Updateにオプトイン済みであればWindows Updateを通じて取得できる
画面2 ESUの更新プログラムは、もちろんAzure Update Managerでも管理できる。Azure VMの場合、ESUもAzure Update Managerの利用も追加コストなし
Azure以外のオンプレミスや他社クラウド上の物理サーバーやVMの場合、ESUを取得する方法は複数あります。その第1の候補となるのが、Azure VMへのリフト&シフトです。Azure VMに移行してしまえば、ESUのために追加設定なし、かつ無料(Azure VMの使用量は別)でWindows UpdateやAzure Update Managerを使用して、ESUの更新プログラムのダウンロードとインストールが可能になります。
オンプレミスの物理サーバーやVMのAzureへのWindows ServerやSQL Serverの移行には、Azure Migrateを利用できます。VMwareなどのハイパーバイザー上で動作しているVMや、物理サーバーについては、Hyper-V VMにP2V/V2Vで移行して、その後、Azureに移行するという方法もあります。Hyper-VはAzureと共通のテクノロジに基づいているため、Hyper-V VMからAzure VMへの移行は比較的簡単です。P2V/V2Vについては、この連載のVMwareからHyper-Vへの移行メモが参考になるでしょう。
Azure Migrateとは|Azure(Microsoft Learn)
メモ. 手間はかかるが金いらずのV2V: VMwareのWindows VMをHyper-Vへ (その1)
メモ. 手間はかかるが金いらずのV2V: VMwareのWindows VMをHyper-Vへ (その2)
現在のAzure以外のオンプレミスや他社クラウド上の物理サーバーやVMをそのまま維持したい場合、ESUを取得する方法は複数あります。ただしその場合、大前提として、ESUを購入するには、Windows ServerやSQL Serverにソフトウェアアシュアランス(SA)が付いている必要があります。SAのないマシンでESUを購入することはできません。
Azure VM以外のESUの取得方法について詳しくは、以下のドキュメントで確認してください。Windows Server 2016およびSQL Server 2016のESUについては、EOSが近づき、詳細が確定し次第、ドキュメントがアップデートされるはずですので、最新の情報を確認してください。
Windows Server の拡張セキュリティ更新プログラム (ESU) を取得する方法|Windows Server(Microsoft Learn)
SQL Server 用の延長セキュリティ更新プログラムとは|SQL(Microsoft Learn)
現在提供中のESUを前提としますが(※今後、手順が変更されたり、新しい方法が追加されるかもしれません)、ESUの取得方法は大きく分けて2つあります。1つは、Microsoft 365管理センターから年ごとのESU(1年目、2年目、3年目)を購入する方法です。Windows ServerのESUの場合は、購入したESUのライセンス認証キーをサーバー側でアクティブ化します。SQL Serverの場合は、Azureポータルにインスタンスを登録し、ESUの請求書を関連付けます。
もう1つの方法は、Azure Arc対応サーバーとしてAzure Arcに接続する方法です。Azure Arc対応サーバーとして接続し、ESUに登録すると、ライセンス認証キーの入力などなしで、Windows UpdateからWindows ServerとSQL ServerのESUの更新プログラムを受け取れるようになり、従量課金で毎月利用料が請求されます。Azure Arc対応サーバーのスクリプトによるオンボード方法では、SQL ServerのAzure Arcへの登録を同時に行うオプションがあります(画面3、画面4)。なお、この方法、Azure Arc対応サーバーを通じてESUを購入する場合、Azure Update Managerのサービスを追加コストなしで利用できます。*13
*13 Azure Arc対応サーバーを通じてESUが有効化されている、Azure Arc対応サーバーをホストするサブスクリプションでMicrosoft Defender for Serversプラン2が有効になっている、アクティブなソフトウェアアシュアランス(SA)のあるWindows Serverライセンス、アクティブなサブスクリプションライセンスであるWindows Serverライセンス(Microsoft CSP経由)、およびAzure Arc対応サーバーを通じた従量課金制(PAYG)ライセンスである場合、Azure Update Managerを追加コストなしで利用できます(Azure Update Managerに対する課金は発生しません)。
Azure Update Managerのよく寄せられる質問: Arc 対応サーバーが Azure Update Manager に対して課金されないシナリオはありますか?|Azure(Microsoft Learn)
画面3 Azure Arc対応サーバーのオンボード時にSQL Serverインスタンスを自動的にAzure Arcに接続するオプション
画面4 ESUライセンスを作成して、Azure Arc対応サーバーを登録することで、ESUの更新プログラムの受信が可能になる
Windows ServerのESUの更新プログラムはWindows Server Update Services(WSUS)にも同期されるため、更新ソースとしてWSUSを利用することが可能です。一方、SQL ServerのESUの更新プログラムは、Azure VMおよびAzure Arcに接続されたマシンに対してWindows Update経由で提供されますが、WSUSに同期されることはありません。Windows Update経由で入手できない環境(Azure Arcに接続されていないオンプレミスのSQL Serverや、WSUSで管理されているマシン)にある場合は、AzureポータルからESUの更新プログラムをダウンロードして、手動でインストールする必要があります。
最後に、Windows ServerのESUの更新プログラムは、Microsoft Updateカタログから誰でもダウンロードできますが、インストールできるのはESUを受け取れる権利のある環境だけです(画面5)。
画面5 ESUを購入していない(ESUのライセンス認証キーでアクティブ化していない)Windows Server 2012 R2に、Microsoft UpdateカタログからダウンロードしたESUの更新プログラムをインストールしようとしたところ
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