
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.136 Windowsキャッシュノードの導入(前)|Microsoft Connected Cache for E/E 完全導入ガイド(5)
2025年09月11日配信
2025年09月11日更新
執筆者:山内 和朗
「Microsoft Connected Cache for Enterprise and Education(以下、Microsoft Connected Cache for E/E)」は、LinuxまたはWindowsに展開できる、ソフトウェアベースのキャッシュソリューションです。前回(vol.135)、前々回(vol.134)は直接的に導入できるLinuxキャッシュノードを構築しました。今回はWindowsキャッシュノードの構築です。Windowsキャッシュノードの場合も、Linuxキャッシュノードと共通のLinuxベースのコンテナー(Azure IoT Edgeコンテナー)で動くのですが、Windows Subsystem for Linux 2(WSL 2)のレイヤーが1つ増える形になります。
Windowsキャッシュノードは、Windows Server 2022以降のデスクトップエクスペリエンスまたはWindows 11バージョン23H2以降に展開できます。展開用パッケージがMSIXパッケージ(.msixbundle)で提供されるため、ストア(UWP)アプリに対応していないからでしょう、Server Coreインストールに導入することはできませんでした。プレビューバージョンはWindows Server 2022英語版で確認しましたが(こちらの連載記事とニュース記事を参照)、一般提供(GA)バージョンの今回はWindows Server 2025日本語版に、Windowsキャッシュノードを展開してみます。
Windowsキャッシュノードを展開する場合は、前提コンポーネントとして、WSL 2およびHyper-Vの役割(管理ツールを含む)が必要です。なお、Hyper-Vの役割はプレビュー版では前提コンポーネントに含まれていませんでした。一般提供(GA)バージョンでは、容量可変タイプの仮想ハードディスク(VHDX)を容量固定タイプに変換するために、Hyper-VモジュールのConvert-VHDコマンドレットを使用します。Windows 11の場合はWindows PowerShell用Hyper-Vモジュールのみで良いようですが*1、Windows Serverの場合は管理ツールだけでなく、Hyper-Vの役割も必要でした。
*1 Windowsキャッシュノードの展開は、Windows Server 2022英語版、Windows Server 2025日本語版、Windows 11バージョン24H2日本語版、ローカルユーザーアカウントおよびドメインユーザーアカウントの実行ユーザーアカウントで確認しました。
Windows Serverの場合は、PowerShellで次のコマンドラインを実行することで、前提コンポーネントを準備できます(画面1)。入れ子になった仮想化が有効なHyper-V仮想マシン(VM)で、Hyper-Vの役割をインスストールできない場合は、仮想化ベースのセキュリティ(Virtualization-Based Security《VBS》)を一時的に無効にするか、VBSの「ハイパーバイザーによるコードの整合性の強制(HVCI、メモリ整合性とも呼ばれます)」だけを無効にすることで、インストールできます(詳しくは、こちらの記事を参照のこと)。
PS C:\> wsl.exe --install --no-distribution PS C:\> Install-WindowsFeature -Name Hyper-V -IncludeManagementTools PS C:\> Restart-Computer |
Windows 11の場合は、PowerShellで次のコマンドラインを実行することで、前提コンポーネントを準備できます。
PS C:\> wsl.exe --install --no-distribution PS C:\> Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V-Management-PowerShell -All (またはEnable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Hyper-V -All) PS C:\> Restart-Computer |
C:ドライブに十分な空き領域(キャッシュサイズは最小100GB)が存在しない場合は、キャッシュドライブのサイズ以上の別のディスクを接続し、初期化して、NTFS形式でフォーマットした上で、ローカルドライブ(D:ドライブなど)またはマウントポイント(D:¥mccwsl01など)にマウントしておきます。
画面1 Windows Server(2022以降のデスクトップエクスペリエンス)に前提コンポーネント(WSL 2およびHyper-V)をインストールする。C:ドライブの空き容量が足りない場合は、キャッシュドライブ用のディスクを接続し、準備しておく
※Hyper-V(Windows 11では不要)およびHyper-V管理ツール(Windows PowerShell用Hyper-Vモジュール)は、Windowsキャッシュノードの展開時にのみ必要であり、展開後は削除することが可能です。安定運用できるまでは、再展開用に残しておくことをお勧めします。 |
AzureポータルでAzureリソースの種類「Connected Cache for Enterprise and Education」をまだ作成していない場合は作成します(前々回を参照)。Azureポータルの「Connected Cache for Enterprise and Education」ブレードで「Connected Cache for Enterprise and Education」リソースを開き、「Cache Node Management > Cache Nodes」の「+Create Cache Node」をクリックします。「Create Cache Node」のページでは、「Cache node host specifications(キャッシュノードホストの仕様)」の「Cache Node Name(キャッシュノード名)」にWindowsマシンのコンピューター名を入力し、「Specify OS(OSを指定してください)」で「Windows」を選択し、「Create」をクリックします(画面2)。
画面2 Windowsマシンのコンピューター名を入力し、OSの種類として「Windows」を選択して「Create」をクリックする
次に、キャッシュノードのページ(Cache Node Configuration)を開き、「1. Configuration」タブでキャッシュドライブのサイズ(最小100GB)を指定します。前回のLinuxキャッシュノードとは異なり、キャッシュドライブのパスは「/var/mcc」固定の1つだけです。プロキシサーバーを利用する必要がある場合は、プロキシサーバーの構成も行い、「Save」をクリックします(画面3)。
画面3 「1. Configuration」タブで、キャッシュドライブのサイズ(最小100GB)を指定して、設定を保存する
「2. Deployment」タブに切り替え、Microsoft Connected Cache for E/Eの実行アカウントの種類を選択し、キャッシュノード展開コマンドをクリップボードにコピーして控えます(画面4)。実行アカウントとしては、gMSA(グループ管理サービスアカウント、ドメイン名¥サービス名)またはローカルユーザーアカウント(コンピューター名¥ユーザー名)またはドメインユーザーアカウント(ドメイン名¥ユーザー名)がサポートされています。コマンド欄に「<COMMAND GENERATION IN PROGRESS, PLEASE CHECK BACK LATER.>」を表示される場合は、いったんこのページを閉じ、しばらく待ってから再度開いて下さい。なお、ここで「Download deployment package」(https://aka.ms/do-mcc-ent-windows-x64)をクリックして展開用パッケージ(Windowsキャッシュノードの場合はMicrosoft Delivery OptimizationのMSIXパッケージ《deliveryoptimization.msixbundle》)のダウンロードリンクを控えたり、ダウンロードしたりする必要はありません。あとで実行するコマンドラインにダウンロードとインストールが含まれています。
画面4 キャッシュノード展開コマンドを控えておく
「3. Updates」タブはオプションです。このタブでは、キャッシュノードのソフトウェアの更新サイクルを指定します。既定は「Fast」で、キャッシュノードは即座に更新されます。「Slow」を選択した場合は、更新する第2または第3曜日と時間(UTC)を指定できます。
次回に続く...
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