
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.82 ワークグループクラスターの新機能とは|Windows Server 2025大特集(19)
2025年02月10日配信
2025年04月25日更新
執筆者:山内 和朗
今回は、Windows Server 2025のワークグループクラスターの新機能について説明します。そして次回は、Windows Server 2025の2台のサーバーを使用して、ワークグループ環境にHyper-Vのフェールオーバークラスター(Hyper-Vホストクラスター)を作成する手順を紹介します。
「Windows Server 2025の新機能」のページには、新機能の1つとして「ワークグループクラスター」がリストされています。数行の説明がありますが、どこが新機能なのかわかりにくいかもしれません。なぜなら、ワークグループクラスターはWindows Server 2016から利用可能になった機能であり、Hyper-Vの仮想マシン(VM)やSQL Serverの可用性グループ(Availability Groups)のワークロードがサポートされていたからです(画面1)。
Windows Server 2025 の新機能 > ワークグループ クラスター|Windows Server(Microsoft Learn)
画面1 Windows Server 2016以降でサポートされるようになったワークグループクラスター。Windows Server 2025の新機能とは?
Windows Serverのサーバーの機能「フェールオーバークラスタリング」を使用すると、クラスターに参加する複数のサーバー(ノード)でクラスター化された役割の可用性とスケーラビリティを高めることができます。例えば、Hyper-Vのクラスター(Hyper-Vホストクラスター)では、VMがノードやネットワークの障害で利用できなくなった場合に、オンラインの別のノードでVMを起動して短時間でVMが提供するサービスを復旧することができます。ファイルサーバーのクラスター(スケールアウトファイルサーバー)では、複数のノード間でクライアントからの共有リソースへのアクセスを負荷分散したり、ノードの1台で障害が発生してもクライアントからのアクセスはオンラインのノードにフェールオーバーされ(SMBの透過的フェールオーバー)、障害の影響を回避しながらアクセスを継続できます。
かつては「Microsoft Failover Clustering(MSFC)」と呼ばれていたWindows Serverが古くから備えるこの機能は、Active Directoryドメイン環境を必要とする機能でした。それが、一部の役割リソースに限定されますが、Windows Server 2016においてワークグループ環境にも導入できるようになりました。Active Directoryに依存しないこのクラスターのことを、「ワークグループクラスター」と呼びます。
ワークグループクラスターの概要、前提条件、制限事項、ワークグループクラスターの作成方法については、以下の公式ドキュメントに詳しく説明されています。
ワークグループ クラスターを作成する|Windows Server(Microsoft Learn)
Windows Server 2025では、Hyper-Vワークロードを実行するワークグループクラスターにおいて、新たにVMのライブマイグレーションができるようになりました。Windows Server 2025の新機能とは、ワークグループクラスターにおけるVMのライブマイグレーションのことです。以下の公式ブログに、ワークグループクラスターが初めてサポートされたWindows Server 2016についての説明がありますが、Hyper-Vがサポート(ただし、非推奨)されていることが明記されています。しかし、ライブマイグレーションはサポートされず、状態の保存と復元を伴う「クイックマイグレーション」のみがサポートされていました。
Workgroup and Multi-domain clusters in Windows Server 2016|Failover Clustering(Tech Community)
これまではワークグループクラスターでサポート(ただし、非推奨)されていたファイルサーバーの役割が、以前のバージョンを含め、現在では“認証の問題”でサポートされなくなった点にも留意してください。
ワークグループ クラスターを作成する > クラスター ワークロード|Windows Server(Microsoft Learn)
以前はワークグループ環境ではファイルサーバーの役割は非推奨ながらサポートされていました。非推奨の理由は、Active Directory(Kerberos)認証を使用できないことでした。代わりに使用されることになるのはNTLM認証ですが、Microsoftは2024年6月に、すべてのバージョンのNTLMを非推奨のWindowsの機能のリストに追加し、アクティブな開発を終了しました。詳しくは、以下の公式ブログで説明されています。サポートされなくなった理由である認証の問題とは、NTLMの段階的な廃止の方針を受けてのことでしょう。
NTLM の廃止に向けた対応について|Microsoft Japan Windows Technology Support Blog(日本マイクロソフト)
次回はいよいよ、ワークグループ環境にHyper-Vのフェールオーバークラスター(Hyper-Vホストクラスター)を作成する手順について説明します。
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