
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.64 Windows Server 2025の新規インストールと新PAYGライセンス|Windows Server 2025大特集(1)
2024年11月28日配信
2025年04月23日更新
執筆者:山内 和朗
2024年11月1日(米国時間)、Windows Server長期サービスリリース(LTSC)の最新バージョン「Windows Server 2025」がリリースされました。今回から時間をかけて、この新しいWindows Serverを特集します。今回は、Windows Server 2025日本語版の新規インストールの変更点、および注意点について取り上げます。
2025年1月22日追記)
Visual Sutudioサブスクリプションで2025年1月後半に利用可能になった更新版インストールメディア(ja-jp_windows_server_2025_updated_jan_2025_x64_dvd_7a8e5a29.iso、OSビルド26100.2894ベース)において、この記事で指摘している管理者パスワード設定時に101/102英語キーボードとして入力される問題が修正されたことを確認しました。Windows Serverセットアップ」の一部の文章が英語のままという既知の問題(I agree everything will deleted including files, apps, and settings/ファイル、アプリ、設定などすべてが削除されることに同意します、Pay-as-you-go/従量課金制)も解決されています。なお、180日評価版については、更新されたインストールメディアは提供されいないため(1月22日現在)、これらの問題が残っています。
既報のとおり、Windows Server 2025は2024年10月1日(米国時間)に一般提供が開始された「Windows 11バージョン24H2」と共通のOSビルド「26100」(GA時のビルドも26100.1742で共通)がベースとなっており、Windows Server 2025デスクトップエクスペリエンスのGUIのスタイルと外観はWindows 11バージョン24H2に準拠したものになています。これまで、Windows Server 2016/2019/2022のデスクトップエクスペリエンスはWindows 10ベースでした。
Windows 11バージョン24H2では、OSのインストーラー(Windowsセットアップ)に変更が加えられていますが、Windows Server 2025のインストーラー(Windows Serverセットアップ)も前半部分はWindows 11バージョン24H2と同様に変更が加えられています。変更が加えられたと言っても、Windows Serverの新規インストールに難しいところはありません。ウィザードに答えていくだけでインストールは簡単に完了します。「Windows Serverのインストール」と「PCを修復する」のセットアップオプションの選択、インストールの種類「アップグレード/インストール」の削除(以前は「アップグレード」を選択しても、インストールメディアからの起動でアップグレードはできない旨を説明する互換性レポートを表示するだけでした)など、以前よりもわかりやすくなったと言えます。とはいえ、変更された部分に関係する、重要な注意点があるので、運用環境に導入する前に、Windows Server 2025 Evaluation(180日評価版)を利用して仮想マシン(VM)やクラウドのIaaS環境で試用することを強くお勧めします。
Windows Server 2025|Microsoft Evaluation Center(Microsoft)
インストールウィザード(Windows Serverセットアップ)のすべての画面を紹介しても意味がないので、ポイントとなる部分だけをかいつまんで紹介します。
Windows Server 2022以前のインストールウィザードは最初のページでインストール言語や時刻/通貨の形式、入力方式、キーボードの種類を選択し、次のページでインストールを開始するスタイルでした(画面1)。
画面1 Windows Server 2022の新規インストールの開始
Windows Server 2025では、「言語設定を選択」と「キーボード設定を選択」の2つに分けられ、3ページ目で「Windows Serverのインストール」を選択して進むスタイルに変更されています(画面2)。2ページ目のキーボードの種類の既定の選択が「PC/AT拡張キーボード(101/102キー)」、つまり英語キーボードになっていることに注意してください。また、3ページ目の「I agree everything will be deleted including files, apps, and settings(ファイル、アプリ、せっていなど、すべてが削除されることに同意します)」がローカライズされていない点については、Microsoftも認識しており、既知の問題にリストされています。
Windows Server 2025 known issues and notifications|Windows message center(Microsoft Learn)
画面2 Windows Server 2025の新規インストールの開始。キーボードの種類の既定が「英語キーボード(101/102キー)」になっていることに注意
この後、「ライセンス方法を選択する」ページでプロダクトキーを入力(またはなしを選択)して、「イメージの選択」ページでインストールするイメージ(デスクトップエクスペリエンスかServer Coreか)を選択し、ライセンス条項に同意し、インストールする場所(ディスクの領域)を選択して、インストールを進めていきます。
「ライセンス方法を選択する」ページで取得済みの正規のプロダクトキーを入力すると、プロダクトキーに応じたエディションがインストールするイメージのページにリストされます。「プロダクトキーがありません」を選択すると、「Standard」「Standard(デスクトップエクスペリエンス)」「Datacenter」「Datacenter(デスクトップエクスペリエンス)」の4つから選択することができます(画面3)。Windows Serverをインストールしたことがある人なら既知のことだと思いますが、「(デスクトップエクスペリエンス)」が付かないイメージはデスクトップを持たないServer Coreインストールであることに注意してください。「ライセンス方法を選択する」ページに新たに追加された「Pay-as-you-go」の選択肢については後述します。評価版のインストールでは、「ライセンス方法を選択する」ページは表示されず、4つのイメージからいずれかを選択する形になります。
画面3 プロダクトキーの入力(または「ありません」を選択)とイメージの選択
インストールが進み何度か再起動するとセットアップの後半(Mini-Setup、OOBEとも呼ばれます)が始まります。とはいっても、Windows 11とは異なり、Windows Serverのセットアップで残っていることは、ローカル管理者(BUILTIN\Administrator)のパスワードの設定だけです(画面4)。パスワードを設定し、初めてログオンすると、診断データがMicrosoftに送信されることに同意すると、インストールは完了です(画面5)。
画面4 ローカル管理者(Administrator)のパスワードを設定し、初回ログイン時に診断データの送信に同意する
画面5 Windows Server 2025デスクトップエクスペリエンス(左)とServer Coreインストール(右)
しかし、ここで重要な注意点があります。それは、Windows 11バージョン24H2の新規インストールの問題点として以下の記事で指摘したのと同様の問題がWindows Server 2025日本語版にも存在するのです。
メモ. Windows 11 24H2の新規インストール、正しいはずのパスワードが弾かれる(追加情報あり)
問題とは、「キーボード設定を選択」で「日本語キーボード(106/109キー)」を正しく選択したとしても、この時点ではまだキーボードの認識が英語キーボード(101/102キー)であるという点です。Windows Serverでは、複雑さの要件を満たしたパスワードの設定が既定で要求されます。英語キーボード(101/102キー)であることに気付かずに複雑さの要件を満たすパスワードを設定すると、意図しない文字で入力されてしまう可能性があります。例えば「P@ssw0rd」(※このパスワードは複雑さの要件を満たしますが、よくあるパスワードなので使用しないでください)と入力したつもりが、実際には「P[ssw0rd」に設定されてしまうのです。さらに残念なことに、英語キーボード(101/102キー)としての認識は初回ログオン後も続き(画面6)、インストール後の最初の再起動後にようやく日本語キーボード(106/109キー)に切り替わります。そのため、2回目のログオン時に初めてパスワードが正しくないと弾かれてしまうのです。
画面6 新規インストールのパスワード設定画面では英語キーボードのまま。英語キーボードの状態はインストール後に一度再起動するまで続く。パスワードの設定、入力時には実際に入力された文字列を確認しておこう
Windows Server 2025日本語版のキーボード問題はデスクトップエクスペリエンスとServer Coreインストールの両方で確認しています。Server Coreインストールではさらに、日本語入力変換ができない(Microsoft IMEが開かない)という問題も確認しています。
「セットアップの以前のバージョン」の使用新規インストールの「セットアップオプションの選択」まで進み、「セットアップの以前のバージョン」をクリックすると、Windows Server 2022以前と同じWindowsセットアップを使用してインストールを進めることができます。「セットアップの以前のバージョン」では、パスワード設定時および初回サインイン時の英語キーボード配列(101/102キー)問題は発生しません。ただし、Server Coreの日本語入力変換不能問題が解消することはありません。 画面 「セットアップの以前のバージョン」への切り替え |
「ライセンス方法を選択する」ページに追加された「Pay-as-you-go(PAYG)」ライセンスオプションは、Windows Server 2025の従量課金ベースのサブスクリプション購入モデルであり、その利用料はAzureサブスクリプションを通じて課金されます。詳細については以下のドキュメントで説明されていますが、料金はAzureのライセンス込みWindows VMと同じライセンスモデルに従い、エディション(Standard/Datacenter)で料金に違いはありません。Azure VMと同様に、サーバーの機能にアクセスするクライアントデバイスにクライアントアクセスライセンス(CAL)は不要です。
Azure Arc を使用して Windows Server 従量課金制を構成する|Windows Server(Microsoft Learn)
PAYGサブスクリプションライセンスの具体的な料金は明らかにされていませんが、Azureの「料金計算ツール(Microsoft)」で30日分のWindows VMの価格を計算し、「ライセンス込み」と「Azure Hybrid Benefit」を切り替えることでAzure VMにおけるWindowsのライセンス料金がわかります。例えば、DSv3シリーズで比較すると2コアのWindowsライセンス料金は月額10,307.72円、4コアの料金は20,615.43円です。これがPAYGの料金の参考になるかどうかわかりませんが、大きく超えることはないはずです(追って調査するつもりです)。課金は使用した時間に対してのみ行われ、ライセンスは従量課金制を解除(無効化)するかAzure Arcからサーバーを削除するまで有効です。物理サーバーやVMのシャットダウンの影響は受けません。PAYGライセンスはアクティブ化後の最初の7日間は無料で試用できます。
2025/1/14追記) Windows Server 2025のPAYGを含む参考価格が公表されました。PAYGライセンスは、物理コアあたり月額33.58米国ドル(0.046米国ドル/時)で利用できます。
Windows Server 2025 ライセンス&料金|Microsoft
2025/1/17追記) メモ. Windows Server 2025 PAYG(従量課金制)サブスクリプションライセンスの実際の価格
Windows Server Datacenterエディションには無制限のOSE(物理またはVMのオペレーティングシステム環境)またはHyper-V分離モードのWindowsコンテナー(Hyper-Vコンテナー)を使用する権利が含まれています。Standardエディションは、物理ハードウェアの物理コア数を満たすコアライセンスごとに2つのOSEまたはHyper-V分離モードのWindowsコンテナー(プロセス分離モードのコンテナーは無制限)の利用権が含まれています。そのため、Datacenterエディションは高度に仮想化されたデータセンターに、Standardエディションは物理環境および小規模に仮想化された環境に適しています。従来のコアライセンスの場合、概ね11台(物理コア数により分岐点は変動します)以上のWindows Server VMを実行する場合、Datacenterエディションの方がライセンスコストが少なくて済むとされています。新たに利用可能になったPAYGライセンスは、Standardエディションを利用している環境に、最適なコストで仮想化をさらに進める新しいオプションになるでしょう。
なお、永続ライセンスとは異なり、PAYGライセンスでは追加のWindows VM(OSE)を実行する権限は付与されません。永続ライセンス版のDatacenterエディションで利用可能な「自動仮想マシンライセンス認証(AVMA)」は、PAYGライセンスの下では使用できません。
PAYGライセンスは、Azure Arcを通じてアクティブ化され、Azureサブスクリプションの料金に含まれる形で毎月課金されることになります。そのため、「ライセンス方法を選択する」ページでPAYGライセンスを選択すると、初回ログオン時(およびAzure Arcのセットアップと構成を完了していない場合)に「Azure Arcセットアップ」が自動開始され、指示に従ってインストールを進めると、Azure Arcへのサーバーの登録と従量課金の選択が可能になります(画面7)。なお、「ライセンス方法を選択する」ページで「プロダクトキーがありません」を選択した場合でも、「サーバーマネージャー」のポップアップから「Azure Arcセットアップ」を開始することでも、従量課金の選択が可能なようです。
画面7 「ライセンス方法を選択する」ページでPAYGライセンスを選択すると、「Azure Arcセットアップ」が自動開始し、従量課金の選択へと進む
PAYGライセンスの管理は、Azureポータルの「Azure Arc|マシン|ライセンス|Windows Server」で行います。ライセンスのアクティブ化には最大10分程かかります。そして、PAYGライセンスをアクティブ化したサーバー側のライセンス状態(「設定|システム|ライセンス認証」は「アクティブではありません」から「アクティブ」に切り替わります(画面8)。
画面8 PAYGライセンスでアクティブ化されたWindows Server 2025、PAYGライセンスの管理はAzureポータルで行う
Windows Server 2025大特集(1)| 2| 3| 4| 5| 6| 7| 8| 9|10|11|12|13|14|15|16|17|18|19|20|21|22