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vol.144 アップグレード or クリーンインストール?|Windows Server 2016 EOSまであと460日

2025年10月09日配信
2025年10月09日更新
執筆者:山内 和朗

 Windows Server 2016の製品ライフサイクルとサポート終了日(End of LifeCycle《EOL》、End of Support《EOS》)である2027年1月12日までまだ1年以上ありますが、対策に着手するには遅すぎるくらいです。最新のWindows Server 2025への移行を前提に、いろいろ考えていきましょう。

 

アップグレードと新規インストール、どっちがいい?

 

 Windows Serverの新バージョンに移行する場合、稼働中のシステムをインプレースアップグレード(アップグレードインストール)して設定やアプリケーションを引き継ぐか、新規インストールして再構築するか、選択肢は2つあります。Windows Server 2016の場合、PaaSやIaaSを選択しないのであれば、移行先は最新のWindows Server 2025になるでしょう。Windows Server 2019やWindows Server 2022を移行先として選択することもできますが、すぐにこれらのOSのEOL/EOSに対応しなければならなくなるため、効率的ではありません。

 移行元と移行先のバージョンが離れすぎると、サポートされるアップグレードパスから外れてしまい、直接的に最新バージョンにアップグレードできないことがあります。Windows Server 2022まで、2つ前のバージョンからのインプレースアップグレードがサポートされていました。例えば、Windows Server 2022には、Windows Server 2016またはWindows Server 2019からのインプレースアップグレードは可能ですが、Windows Server 2012 R2以前からのインプレースアップグレードはできません。Windows Server 2025では、このアップグレードパスが拡大され、4つ前のバージョン(N-4)*1からのインプレースアップグレードがサポートされます。 つまり、Windows Server 2016はもちろん、Windows Server 2012 R2からのインプレースアップグレードも可能になりました(画面1)。

*1 有効化されている役割やシステム構成によっては、インプレースアップグレードにN-2またはN-1の制約がある場合があります(リモートデスクトップサービス展開のインプレースアップグレードフェールオーバークラスタ-のローリングアップグレードなど)。

 

 画面1 Windows Server 2016は、間に2つバージョンをはさんでいるが、Windows Sever 2025にインプレースアップグレード可能
画面1 Windows Server 2016は、間に2つバージョンをはさんでいるが、Windows Sever 2025にインプレースアップグレード可能

 

 なお、フェールオーバークラスターでは、高可用性リソースを維持したままホストOSをバージョンアップ(インプレースアップグレードまたはクリーンインストール)するローリングアップグレードがサポートされています。ただし、ローリングアップグレードでは、次の新しいバージョンのOS(Windows Server 2022からWindows Server2025など)へのアップグレードのみがサポートされています。バージョンが離れている場合は、最新バージョンに移行されるまで複数回実行(Windows Server 2016からWindows Server 2019、Windows Server 2019からWindows Server 2022...)する必要があります。リモートデスクトップサービス(RDS)の展開もインプレースアップグレードが可能ですが、こちらには従来のN-2のルールが適用されます。

 

クラスター OS のローリング アップグレードを使用して Windows Server フェールオーバー クラスターをアップグレードする|Windows Server(Microsoft Learn)

リモート デスクトップ サービスの展開をアップグレードする|Windows Server(Microsoft Learn)

 

ハードウェアの老朽化にはリプレースで対応

 

 ソフトウェア的にはインプレースアップグレードができても、OSの器であるハードウェアとの兼ね合いで、ハードウェアをリプレースし、新規インストールして再構築したほうがよいことがあります。Windows Server 2016がリリースされたのは2016年10月のこと。その当時導入したハードウェアは老朽化しているはずで、当然のようにハードウェアの製品保証は切れているでしょうし、故障しても代替の部品の入手が難しくなっているでしょう。10年前のハードウェアは技術的にも古く、最新OSの機能を生かしきれない可能性があります。

 

VMゲストのインプレースアップグレードの考慮点


 Windows Server 2016登場時には既に仮想化が普及していました。仮想マシン(VM)ならVMというハードウェアの老朽化(VMをホストするハードウェアは別の話)の心配はありません。しかし、特にゲストOSがWindows Server 2016の場合、何年も継続している毎月の品質更新プログラムによって容量可変タイプの仮想ハードディスク(VHD/VHDX)が肥大化し、Hyper-Vホストのディスク領域を圧迫していないでしょうか。Windows Serverのインプレースアップグレードは、Windows 10/11のように以前のWindowsインストールを保持しないため、OSディスクをリフレッシュする機会になり、無駄なディスク使用を解消できる可能性があります。しかし、Hyper-Vホストから見たVHDX/VHDのファイルサイズを最適化して縮小できるかどうかは別の話です。

 

 Windows Server 2016とWindows Server 2025では既定のパーティション構成が異なります。Windows Server 2016の新規インストールでは最初のパーティション(Partition 1、450MB)に回復パーティションが配置されます。一方、Windows Server 2025では最後のパーティション(Partition 4、700MB以上)に配置されます。Windows Server 2016からWindows Server 2025にインプレースアップグレードした場合、既存の回復パーティションのサイズが足りないため、C:ドライブを縮小して、最後のパーティション(Partition 5)を作成し、新たな回復パーティションとして使用します(最初のパーティションは残りますが使用されてません、画面2)。そのため、インプレースアップグレードでディスク領域が大きく解放されたとしても、ディスク最後尾の回復パーティションの存在が影響して、VHDX/VHDを最適化しても期待したほど縮小できないという状況が発生すると思います。これまでの経験上、VHDX/VHDの最適化が期待通りにできないことがあるのは、そういう理屈があるのだと考えています。

 

 画面2 Windows Server 2016をWindows Server 2025にインプレースアップグレードすると、最初に無駄なパーティション(以前の回復パーティション)が残る。VMの場合、VHD/VHDXの最適化を阻む原因に
画面2 Windows Server 2016をWindows Server 2025にインプレースアップグレードすると、最初に無駄なパーティション(以前の回復パーティション)が残る。VMの場合、VHD/VHDXの最適化を阻む原因に

 

 なお、現状、SSD-assistanceはコンピューターに搭載されたディスクと論理ボリュームの情報を収集しますが、パーティション構成の情報については収集しないため、サーバー設定仕様書にパーティション構成は含まれません。

 

リプレース時のシステム再構築に役立つサーバー設定仕様書

 

 インプレースアップグレードの最大の利点は、システム設定やアプリケーションをそのまま維持しながら、最新のOSに移行できることです。ハードウェアをリプレースして、最新OSを新規インストールして移行する場合、インストール後のシステム初期設定からすべて再構築する必要があります。その際、移行漏れのないようにするには、移行元のシステム設定を把握できるドキュメントの存在が重要になります。それが、前回紹介したSSD-assistanceで簡単生成できるサーバー設定仕様書ということになります。

 SSD-assistanceのサーバー設定仕様書は、可能な限り、WindowsのGUIに合わせたデザインになっているため(画面3、画面4)、システム設定を新しいOS環境に再構築するのに大いに役立つはずです。

 

 画面3 Windows Server 2016の「システム」コントロールパネル
画面3 Windows Server 2016の「システム」コントロールパネル

 

画面4 サーバー設定仕様書の「システム」コントロールパネルに対応する部分
画面4 サーバー設定仕様書の「システム」コントロールパネルに対応する部分。合計コア数については「サーバー設定仕様書のプロセッサ数と合計コア数について-SSD-assistance FAQ(仮)|製品コラム」を参照のこと

Windows Server 2016 EOSまであとX日(1)(2)|(3)

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