
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.145 役割と機能に見えてくるバージョン格差|Windows Server 2016 EOSまであと455日
2025年10月14日配信
執筆者:山内 和朗
Windows Server 2016の製品ライフサイクルとサポート終了日(End of LifeCycle《EOL》、End of Support《EOS》)である2027年1月12日までまだ1年以上ありますが、対策に着手するには遅すぎるくらいです。最新のWindows Server 2025との違いを、サポートする役割と機能の違いから見てみましょう。
一般的に、OSのバージョンが離れれば、離れるだけ、インプレースアップグレードや新規インストールによる再構築のどちらの方法をとるにせよ、移行は困難になります。技術や仕様に大きな変更があったり、従来普通に利用できてきた機能が、非推奨になっていたり、削除されていたりするからです。非推奨や削除になった機能については、移行前に代替策を検討する必要があります。
Windows Server 2016から最新のWindows Server 2025までに、非推奨になった機能や削除された機能については、次回以降に説明しますが、その一部はサーバーの役割と一覧に現れてきます。前回紹介したように、弊社SSD-assistanceで生成したサーバー設定仕様書は、WindowsのGUIに合わせて設定情報を見ることができます。サーバーの役割と機能の有効化状態も「サーバーの役割と追加ウィザード」で見るのと同等の形式になっています(画面1)。
画面1 「サーバーの役割と追加ウィザード」の役割と機能の一覧と、SSD-asssitanceのサーバー設定仕様書の対応する部分
このように、移行前にSSD-assistanceでサーバー設定仕様書を作成しておけば、コンピューターのコンソールに向かって操作して確認しなくても、現在の役割と機能の有効化状態を確認することができます。SSD-assistanceを利用していなくても、役割と機能の有効化状態の一覧は、コンピューターのPowerShellウィンドウでGet-WindowsFeatureコマンドレットを実行し、次のように結果をファイル(CSVなど)に出力すれば対応できます(画面2)。
Get-WindowsFeature |Export-CSV -Path "ファイル名.csv" -Endoding UTF8 |
画面2 役割と機能の現在の状態をCSVファイルに出力する
こちらのUTF-8(BOM付き)CSVファイル(2016x2025_roleandfeature.csv .txt形式はこちら)に、Windows Server 2016 Datacenter(デスクトップエクスペリエンス)、Windows Server 2016 Datacenter(Server Core)、Windows Server 2025 Datacenter(デスクトップエクスペリエンス)、Windows Server 2025 Datacenter(Server Core)がサポートする役割と機能を一覧にまとめました(画面3)。〇はインストール可能な役割や機能であることを示しています。Server Coreインストールでは、サポートされる役割と機能が制限されます。Server Coreインストールの制限については、以下のドキュメントも確認してください。
Windows Server - Server Core に含まれていない役割、役割サービス、および機能|Windows Server(Microsoft Learn)
画面3 Windows Server 2016、2019、2022、2025がサポートするサーバーの役割と機能の一覧
役割と機能の一覧から、差異のある部分について抜き出して説明します。なお、バージョンが異なる.NET FrameworkおよびASP.NET(Windows Server 2016の既定は4.6.2、Windows Server 2025の既定は4.8.1)については省略します。.NET Framework 4.8.1は、.NET Framework 4.x(CLR 4)の以前のバージョンをベースに、既存機能を保持しながら、修正と新機能を追加することで構築されているからです。
この役割は、以前存在したMicrosoft MultiPoint Serverの機能をWindows Server 2016に実装できるようにした役割です。Microsoft MultiPoint Serverは、教育現場などで複数のユーザーで1台のコンピューターのデスクトップを同時に共有したり、リモート制御やチャットでやり取りしたりできます(画面4)。リモートデスクトップセッションホストへの接続の他、MultiPoinコネクターにより接続したWindowsデバイスを使用できます。
Windows Server 2016はこの役割をサポートする最後のバージョンになりました。以降のバージョンでは、MultiPointコネクターおよびツールのみがサポートされます。
画面4 Windows Server 2016で構築したMultiPointサーバー環境。このような環境を運用中であれば、後継サービスがないことに注意
この機能はIIS 6との管理互換性を提供するもので、Windows Server 2016以降はIIS 10です。Windows Server 2019で非推奨になり、Windows Server 2025で削除されました。
この役割は、以前存在した小規模ビジネス向けWindows Server Essentials製品と同等の管理機能を、Windows Server 2016に実装できるものです(画面5)。この機能は、Windows Server 2019で削除されました。代替の役割はありません。Windows Server EssentialsはWindows Server 2019 Essentialsまで提供されましたがWindows Server Essentials エクスペリエンスは存在せず、ライセンス上の違いでしかなくなりました。
画面5 Windows Server 2016のWindows Server Essentialsダッシュボード。このような環境を運用中の場合も、後継サービスがないことに注意
Windows Server 2016まではリモートデスクトップサービス(RDS)のこれらの役割サービスがServer Coreインストールでもサポートされていましたが、Windows Server 2019以降、Server Coreインストールではサポートされなくなりました。現在、Server Coreインストールでこの役割をホストしている場合、後継バージョンのデスクトップエクスペリエンスで再構築する必要があるでしょう。
分散スキャン サーバーは、印刷とドキュメントサービスの役割のサブサービスです。このサービスは、ネットワークスキャナーの共有と管理の中央の管理ポイントを提供するものです(画面6)。このサービスは、Windows Server 2019で削除されました。代替のサービスはありません。
画面6 Windows Server 2016のサーバーで「スキャン管理」スナップインを利用して管理しているなら、Microsoftは後継サービスを提供していないので代替策を検討する必要あり
iSNS サーバー サービスは、IP SAN内部でiSCSIイニシエーターとターゲットの動的発見を可能にするサービスです。Windows Server 2022で削除されましたが、iSNSクライアントの機能には影響しません。他のiSNSサーバーに接続することや、iSCSIターゲットを個別に追加することか可能です。
Windows Server 2012の時点で既に非推奨になっていた機能であり、Windows Server 2022で正常に動作しなくなり、Windows Server 2025で削除されました。WindowsはSMTPサーバーの代替機能を提供しません。Windows Server 2016でSMTPサーバーをスマートホストなどに利用している場合は、Windows Server 2022以降ではその方法は使えなくなるので、サードベンダー製品など代替策を検討する必要があります。
Windows PowerShellの最新バージョンはWindows PowerShell 5.1であり、これが最後のバージョンです。Windows PowerShell 2.0エンジンは互換性のためにサポートされていましたが、Windows Server 2019で非推奨化され、2025年9月の品質更新プログラム(2025-9B)でWindows 11バージョン24H2およびWindows Server 2025から削除されました。最新のPowerShellはクロスプラットフォームのPowerShell(旧称、PowerShell Core、現在の最新バージョンはPowerShell 7.5.2)であり、最新のPowerShellをインストールすることが推奨されています。
この機能は削除されたわけではなく、Windows Server 2022でオンデマンド機能(FOD)化されましたWindows Server 2022以降でも既定でインストールされます(画面7)。
画面7 PowerShell ISEは、Windows Server 2016まではサーバーの機能だったが(画面上)、Windows Server 2022以降ではオンデマンド機能となり(画面下)、既定でインストールされるように
Windows Server 2019(Windows 10バージョン1809)でRNRP APIが非推奨化され、Windows Server 2025で削除されました。
Windows Server 2016以前はWindows展開サービス(WDS)のこれらの役割サービスをServer Coreインストールで実行することはできませんでしたが、Windows Server 2019以降ではサポートされるようになりました。
Windows Server 2019でWindows Subsystem for Linux(WSL)バージョン1が追加され、Windows Server 2022以降はWSLバージョン2(WSL 2)が利用可能です。WSL 2では、LinuxシェルでネイティブなLinuxアプリケーションやツールを実行でき、WindowsとLinuxのファイルシステムの両方にWindowsとLinuxの両方からアクセスできます。Hyper-VのVMにLinuxゲストをインストールするより、軽量でシームレスなLinux環境を利用できます。
これらの機能は、SMB 1.0/CIFS ファイル共有のサポート(FS-SMB1)から分離される形でWindows Server 2019で追加され、Windows Server 2019以降、SMB 1は新規インストールで既定で無効になりました。Windows 10バージョン1809およびWindows Server 2019以降のSMB 1の動作の変更について詳しくは、以下のドキュメントで説明されています。
SMBv1 が既定で Windows Server および Windows にインストールされていない|Windows Server(Microsoft Learn)
システムインサイトとは、Windows Serverのサーバーリソースを事前に予測および管理できるようにするものです。この機能はWindows Server 2019で追加され、Windows Admin CenterまたはPowerShellを使用して管理できます(画面8)。
画面8 Windows Server 2019からOSに組み込まれたシステムインサイトによるサーバーリソースの予測
Windows Server 2019で追加された、ファイルサーバーの設定とデータの新しいサーバーやAzureへの移行を支援するサービスです。Windows Server 2016のファイルサーバーの移行に活用できます(画面8)。
記憶域移行サービスの概要|Windows Server(Microsoft Learn)
画面8 Windows Server 2019以降のストレージ(記憶域)の移行ウィザードは、ファイルサーバーの最新サーバーまたはAzureへの移行を支援するツールになる
Windows Server 2022(OSビルド20348.2031、2023-10B以降)およびWindows Server 2025(GA)のデスクトップエクスペリエンスに追加された、組み込みのWindows Admin Centerセットアップ機能です。Windows Server 2025版は最新のWindows Admin Center(v2)(前出の画面7、画面8)をインストールします。
なお、Windows Server 2025およびWindows Server 2022(2023-10 B、OSビルド20348.2031以降)のデスクトップエクスペリエンスには、「Azure Arcセットアップ」という組み込みのセットアップ機能もあり、既定で有効化されています。Windows Server 2022ではサーバーの機能「Azure Arc Setup(AzureArcSetup)」(Get-WindowsFeatureで確認可能)でしたが、Windows Server 2025ではオンデマンド機能「AzureArcSetup(AzureArcSetup~~~~)」(Get-WindowsCapabilityで確認可能)に変更されました。
vol.70 Azure Arc/WAC/sshdの簡単セットアップ|Windows Server 2025大特集(7)
これらは、Microsoftのソフトウェア定義ネットワーク(Microsoft SDN v2)のコンポーネントの一部であり、ネットワーク仮想化はWindows Server 2019で追加されました。ネットワークATCは、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(Azure Local、旧称Azure Stack HCI)のネットワーク構成の展開のためのもので、LTSCバージョンではWindows Server 2025で初めて追加されました。
このように、Windows Server 2016では利用できていても、最新OSでは役割や機能自体が無くなっているものがあるので、移行前に代替策を検討する必要があります。Windows Server 2025で削除された機能をWindows Server 2016で利用していた場合でも、インプレースアップグレードが必ずしもブロックされるわけではないことに注意してください。ブロックされる場合もあるかもしれませんが、SMTP ServerとPNRPは無視され、インプレース後削除されました。一方で、Windows Server 2019以降で追加された役割や機能には、移行や移行後の運用に役立ちそうな機能がOSに標準搭載されていることも分かるでしょう。