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vol.66 旧バージョンからのアップグレード(Hyper-Vサーバー編)|Windows Server 2025大特集(3)

2024年12月05日配信
2025年04月25日更新
執筆者:山内 和朗

 前々回はWindows Server 2025の新規インストールの方法や変更点、注意点(特に日本語版固有の)について説明しました。今回は、旧バージョンのWindows Serverからのアップグレードを検証してみましょう。何も役割を持たないサーバーをアップグレードしても面白くないため、今回はHyper-Vホストとして稼働しているWindows Server 2022をWindows Server 2025にインプレース・アップグレードしてみます。

 

アップグレードパスとハードウェア要件

 

 Windows Serverはこれまで2つ前のバージョンからのインプレースアップグレードが可能でした。例えば、Windows Server 2022にアップグレードできるのは、Windows Server 2016とWindows Server 2019です。Windows Server 2025からはアップグレードパスが拡大され、Windows Server 2012 R2(2023年10月10日に製品サポートは終了していますが、拡張セキュリティ更新プログラム《ESU》契約者には2026年10月13日までセキュリティ更新プログラムが提供されます)以降からのアップグレードが可能になりました。ただし、これまでと同様に、エディションの変更を伴うアップグレードは可能ですが、インストールの種類(デスクトップエクスペリエンスかServer Coreインストールか)の変更を伴うアップグレードはできません。また、Windows Server 2025評価版を使用したアップグレードもできません。いずれの場合も、新規インストール(引き継ぐ項目: 何もしない)の扱いになります。なお、サーバーの役割や機能によってはアップグレードでは引き継がれない場合があります。その場合は、「Windows Server移行ツール」や「ストレージ移行サービス」を利用することで移行できる場合があります。

Windows Server のアップグレードの概要|Windows Server(Microsoft Learn)
Windows Server の役割と機能のアップグレードと移行|Windows Server(Microsoft Learn)

 ハードウェア要件はWindows Server 2019やWindows Server 2022から大きく変更されていませんが、CPU要件として新たに「SSE4.2命令セット」と「POPCNT命令」のサポートが追加されたことに注意してください。これらの要件に対応していない古すぎるCPUの場合は、アップグレードできない可能性があります。

Windows Server のハードウェア要件|Windows Server(Microsoft Learn)

 今回はHyper-Vの役割を持つWindows Server 2022のサーバーをWindows Server 2025(いずれも製品版)にアップグレードしてみます。Hyper-Vサーバーと言っても物理環境ではありません。Hyper-Vの入れ子になった仮想化(Nested Virtualization)を利用して、Hyper-V VMで動作する仮想マシン(VM)に用意した環境です(画面1)。ゆくゆくはこの連載で「オンプレミスのラボ環境」と呼んでいるHyper-Vの物理サーバーをアップグレードするつもりですが、運用環境をWindows Server 2025に移行する前に検証しておこうというわけです。リリースされたばかりのWindows Server 2025で既に明らかになっている既知の問題や、今後出てくるであろう未知の問題、これまで試用してきた中で感じた品質に関する不安が解消されるまで、しばらくの間(数か月、あるいはそれ以上)、運用環境の移行については様子を見るつもりです。

 

画面1 Hyper-Vの入れ子になった仮想化機能を利用して、VMに用意したアップグレード検証用のWindows Server 2022 Hyper-Vサーバー環境
画面1 Hyper-Vの入れ子になった仮想化機能を利用して、VMに用意したアップグレード検証用のWindows Server 2022 Hyper-Vサーバー環境。VMを1台作成し、Windows Server 2025 Standard Evaluation Server Coreをインストール済み

インプレースアップグレードはウィザードに答えるだけで超簡単

 

 インプレースアップグレードは、アップグレード対象のWindows Serverが稼働している状態に、管理者としてサインインして実行します(インストールメディアから起動した場合は新規インストールのみ可)。インプレースアップグレードの方法は複数ありますが、今回は標準的なインストールメディア(ISOイメージまたはUSBフラッシュドライブ)を使用した方法で説明します。VMであればISOイメージをDVDドライブに割り当てます。物理サーバーの場合は、DVDまたはUSBフラッシュドライブを作成しなくても、エクスプローラーでISOイメージをマウントして開始することができます。

 

 Hyper-Vサーバーのインプレースアップグレードを実行する前に必要な前準備は特にありません。あるとしたら、OSディスク(C:ドライブ)に十分な空き領域があることを確認しておくとよいかもしれません。

 インストールメディアのルートにある「Setup.exe」を実行して、「Windows Serverのインストール(Windows Serverセットアップ)」を開始し、「ライセンス方法を選択する」のページでプロダクトキーを入力するか「従量課金制」(新規インストールの際「Pay-as-you-go」となっていたオプション)を選択します(画面2)。従量課金制は、Windows Server 2025から利用可能になったサブスクリプション購入オプションです。詳しくは、前々回の記事をご覧ください。。

 

画面2 購入したWindows Server 2025 StandardまたはDatacenterエディションのプロダクトキーを入力する
画面2 購入したWindows Server 2025 StandardまたはDatacenterエディションのプロダクトキーを入力する

 プロダクトキーを入力すると、「イメージの選択」ページにプロダクトキーに対応したエディションのインストールイメージが表示されるので、現在実行中の環境に合わせて、デスクトップエクスペリエンスかServer Coreインストール(“デスクトップエクスペリエンス”の表記がないイメージ)のいずれかのイメージを選択します。従量課金制を選択した場合は、StandardとDatacenterの4イメージからいずれかを選択します(画面3)。

 

画面3 インストール対象としてデスクトップエクスペリエンスのイメージを選択する
画面3 インストール対象としてデスクトップエクスペリエンスのイメージを選択する

 「適用される通知とライセンス条項」のページで「同意する」をクリックし、次の「引き継ぐ項目を選んでください」のページで「ファイル、設定、アプリを保持する」を選択します(画面4)。“アップグレード”という表現は出てきませんが、このオプションがアップグレードインストールを意味します。

 

画面4 アップグレードインストールのためには「ファイル、設定、アプリを保持する」を選択する
画面4 アップグレードインストールのためには「ファイル、設定、アプリを保持する」を選択する

 最後に「インストール準備完了」のページで「インストール」をクリックしてインストールを開始します(画面5)。「Windows Serverのインストール中」と表示され、途中、数回再起動が行われると、インストールが完了し、ログオン(サインイン)画面が表示されます。初回ログオン時に「診断データをMicrosoftに送信する」の確認画面が表示されるので、「同意」をクリックします。

 

画面5 「インストール」をクリックして、インストールを開始する
画面5 「インストール」をクリックして、インストールを開始する

 これでWindows Serverのアップグレードは完了です。ログインしたらWindows Updateを実行して、最新の品質更新プログラムをインストールします(画面6)。

 

画面6 Windows Server 2025にアップグレードしたら、出来るだけ早くWindows Updateを実行して最新の品質更新プログラムをインストールしよう
画面6 Windows Server 2025にアップグレードしたら、出来るだけ早くWindows Updateを実行して最新の品質更新プログラムをインストールしよう

 

コマンドラインからの自動アップグレード

 

  インストールメディアのルートにある「Setup.exe」に次のようにパラメーターを指定して実行することで、アップグレードインストールを自動化することができます。XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXXーXXXXXはプロダクトキーに置き換えてください。インデックス番号は¥Souces¥install.wimに含まれるインストールイメージ(エディションとインストールの種類)の番号であり、「DISM /Get-WimInfo /Wimfile:<Install.wimのパス>」または「DISM /Get-ImageInfo /imagefile:<Install.wimのパス>」またはPowerShellの「Get-WindowsImage -ImagePath <Install.wimのパス>」で確認することができます。例えば、Standard(デスクトップエクスペリエンス)のインデックス番号は2です。

 

E:¥> .\setup.exe /auto upgrade /dynamicupdate disable /eula accept /pkey XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX /imageindex <インデックス番号>

 

画面: Setup.exeをコマンドラインから実行

画面: コマンドラインから自動アップグレードインストールを開始する

 

Windows Server 2025 Hyper-Vの変更点


 Windows Server 2025において、Hyper-V関連で大きな新機能といえば「個別デバイスの割り当て(DDA)」に追加された「GPUパーティション分割(GPU Partitioning≪GPU-P≫)のサポートくらいしかないようです。ただし、この機能は物理的なGPUデバイスを複数のVMで共有でき、ライブマイグレーションにも対応、しかも「Windows Admin Center(WAC)」を使用してGUIで構成できるというものです。Windows Server 2025の新機能についてAI関連の話を聞いたことがある人もいると思いますが、それがAIワークロードを高可用性で実行できるこのGPU-P対応のことです。ただし、対応するハードウェアが限定(NVIDIA GPUの一部)されているため、誰でも利用できるというものではありません。

GPU パーティション分割|Windows Server(Microsoft Learn)

 Windows Server 2025において、Hyper-Vに加えられた変更はいくつかあります。1つは、既定の構成バージョンが「12.0」になったことです(画面7)。これは、Windows 11バージョン24H2と共通です。そのため、Hyper-Vサーバーをインプレースアップグレードしたあとは、どこかのタイミングで既存のVMの構成バージョンを最新にアップグレードすることをお勧めします。

 

画面7 Windows Server 2025 Hyper-VのVMの既定の構成バージョンはWindows 11バージョン24H2と同じ「12.0」に。サポートされる構成バージョンはGet-VMHostSupportedVersionコマンドレットで確認できる
画面7 Windows Server 2025 Hyper-VのVMの既定の構成バージョンはWindows 11バージョン24H2と同じ「12.0」に。サポートされる構成バージョンはGet-VMHostSupportedVersionコマンドレットで確認できる

 構成バージョンは、VMのホスト間の移動が制限されないように、既定では自動アップグレードされません。例えば、Hyper-Vホストクラスターの場合は、すべてのノードがWindows Server 2025に置き換わったタイミングで、構成バージョンをアップグレードします。旧バージョンのHyper-VサーバーにVMを移動する予定がないという場合は、既存のVMや他のサーバーからインポートしたVMの構成バージョンをアップグレードしましょう。構成バージョンのアップグレードは、「Hyper-Vマネージャー」のVMの右クリックメニューにある「構成バージョンのアップグレード」から実行できます(画面8)。

 

画面8 VMを旧バージョンのHyper-Vサーバーに移動する予定がなければ(なくなったら)、VMの構成バージョンをアップグレードする
画面8 VMを旧バージョンのHyper-Vサーバーに移動する予定がなければ(なくなったら)、VMの構成バージョンをアップグレードする

 もう1つの変更点は、「Hyper-Vマネージャー」の「仮想マシンの新規作成ウィザード」の「世代の指定」ページにおける既定の選択が「第2世代」に変更されたことです(画面9)。第2世代のVMは、UEFIベースのハードウェアを持ち、セキュアブートが既定で有効です。また、(仮想)TPMを追加することができ、BIOSベースのレガシなハードウェア構成を持つ第1世代より、ハードウェアレベルで高度なセキュリティ機能を提供します。

VMの世代|Windows Server(Microsoft Learn)

画面9 Windows Server 2025とWindows 11バージョン24H2のVMの既定は「第2世代」に変更された
画面9 Windows Server 2025とWindows 11バージョン24H2のVMの既定は「第2世代」に変更された

 

機能更新プログラムによるインプレースアップグレード(新機能)について

 

 Windows Server 2025からは、サーバーOSについてもWindows UpdateおよびWindows Server Update Services(WSUS)を通じた「機能更新プログラム(Feature Update)」によるインプレースアップグレードの手段が利用可能になる予定です。機能更新プログラムによるインプレースアップグレードは、Windows 10/11と同様のエクスペリエンスで自動的なインプレースアップグレードを実行することができ、クラスターシステムの各ノードのOSのローリングアップデートにも対応します。Windows Server 2025の機能更新プログラムは、Windows Server 2019およびWindows Server 2022を実行するサーバーに対して「オプションの更新プログラム」として利用可能になるもので、自動インストールされることはありません。

 

機能更新プログラム、クリーン インストール、または Windows Server への移行|Windows Server(Microsoft Learn)

 

 しかし、Windows Server 2025のリリース直後、サードパーティの更新管理ツールを使用する一部の環境で予期せずWindows Server 2019/2022がWindows 2025に自動アップグレードされたり、本来、機能更新プログラムによるインプレースアップグレードを望む企業にのみ提供されるはずのオプションの更新プログラムとしての機能更新プログラムが、そうでない企業のデバイスに表示されたりといった問題が確認されています。また、Windows UpdateやWSUSでWindows Server 2025の機能更新プログラムを展開する方法もはっきりとしません。この新しいインプレースアップグレードオプションは、当面の間、注意したほうがよさそうです。

Windows Server 2022 および Server 2019 が予期せず Windows Server 2025 にアップグレードされました|Windows message center(Microsoft Learn)

 

最新情報: この問題を受け、MicrosoftはWindows UpdateによるWindows Server 2025アップグレードの提供を一時停止しています。2025年前半に再開を予定しています。


 サーバーOSは、Windows Server 2025の機能更新プログラムが利用可能になったとしても、安易にダウンロードとインストールを開始するべきではありません。なぜなら、サーバーの役割や機能、アプリケーションによっては、インプレースアップグレードに対応していない場合があるからです。また、Windows 10/11と同様のエクスペリエンスと言いましたが、サーバーOSを無料でアップグレードできるわけではありません。Windows Server 2025のライセンス(商用、OEM、ボリュームライセンス、ソフトウェアアシュアランス付きボリュームライセンス)の購入が必要です。

 

Azure VMのインプレースアップグレードについて

 

 インストールメディアや機能更新プログラムによるインプレースアップグレードは、Azure VMではサポートされません。Azure VMで実行されているWindows Serverのインプレースアップグレードは、Azureが提供するアップグレード用メディアを使用することで可能です。ただし、この記事の執筆時点でサポートされているのはWindows Server 2022へのアップグレードまでです。

Azure で Windows Server を実行している VM のインプレース アップグレード|Azure(Microsoft Learn)

 Azure VM スケールセットの場合に含まれるVMの場合は、「OS イメージの自動アップグレード」機能を利用することができます。

Azure 仮想マシン スケール セットによる自動的な OS イメージのアップグレード|Azure(Microsoft Learn)

 

Windows Server 2025大特集(1)...|(3)

 

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