
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.67 旧バージョンからのアップグレード(ドメインコントローラー編)(追記あり)|Windows Server 2025大特集(4)
2024年12月19日配信
2025年04月22日更新
執筆者:山内 和朗
前回はWindows Server 2022を実行するHyper-Vサーバーを、インストールメディアを使用してWindows Server 2025にインプレースアップグレードしてみました。アップグレード後に仮想マシン(VM)の構成バージョンをアップグレードし、その後、VMを起動して正常に動作することを確認しました。今回は、Active Directoryドメインサービスを実行するWindows Server 2019およびWindows Server 2022のドメインコントローラー(別フォレスト、別ドメイン)のインプレースアップグレードを検証します。結論から言うと、インプレースアップグレードは失敗し、検証することの重要性が分かる結果となりました。
Active Directoryのフォレスト/ドメインのアップグレードの方法には、ドメインコントローラーを直接的にWindows Serverの新バージョンにアップグレードインストールする「インプレースアップグレード」の方法と、新しいバージョンのWindows Serverをドメインコントローラーに昇格して既存のドメインに追加し、操作マスターの役割を新しいドメインコントローラーに転送して、古いバージョンのドメインコントローラーを降格する(その後、別の役割のために再利用するか撤去)流れで行う「ローリングアップグレード」の2つの方法があります。
ドメイン コントローラーを新しいバージョンの Windows Server にアップグレードする|Windows Server(Microsoft Learn)
今回は、ドメインコントローラーのインプレースアップグレードを検証します。アップグレードインストールの方法は、前回と同じですが、ドメインコントローラーのインプレースアップグレードの場合は、その前に「Adprep.exe」(インストールメディアの「¥Support¥adprep」にあります)を使用してフォレスト/ドメインを準備する必要があります。具体的には、ドメインコントローラーのコマンドプロンプト(cmd.exe)で「adprep /forestprep」をフォレストで1回実行し、「adprep /domainprep」をドメインで1回実行します。
Windows Server 2025へのドメインのアップグレードの場合、フォレスト/ドメイン機能レベル「Windows Server 2016」(Windows Server 2019およびWindows Server 2022で新しい機能レベルは追加されませんでした)からのアップグレードが可能です。フォレスト/ドメイン機能レベルは「Active Directoryドメインと信頼関係」や「Active Directoryユーザーとコンピューター」スナップインで確認することもできますが、PowerShellで以下のコマンドラインを実行し、それぞれ「Windows2016Forest」「Windows2016Domain」であれば機能レベルの要件は満たしています(画面1、画面2)。
(Get-ADForest).ForestMode (Get-ADDomain).DomainMode |
画面1 フォレストとドメインの機能レベルが「Windows Server 2016」であることを確認する
画面2 インプレースアップグレード前にAdprep.exeでフォレストとドメインを準備する。Adprepでフォレストを準備すると、Active Directoryのスキーマバージョンが「87」(Server 2016のみのドメインコントローラーの場合)または「88」(Server 2019/2022のドメインコントローラーありの場合)から「91」にアップグレードされる
フォレストとドメインの準備が終わったら、Windows Server 2025のインストーラー(Windows Serverセットアップ)を使用して、アップグレードインストールを実行します(画面3)。
画面3 インストールメディアの「Setup.exe」を実行して、インプレースアップグレードを実行する
インプレースアップグレードが完了すれば、フォレスト/ドメインの機能レベル「Windows Server 2016」のまま、ドメインのアップグレードも完了するはずです。必要に応じて、フォレスト/ドメインの機能レベルを最新の「Windows Server 2025」に変更できるようになるはずです。以前、同じ方法でWindows Server 2019のドメインコントローラーをWindows Server 2022にインプレースアップグレードした経験があります。
しかし、今回、アップグレードインストールは失敗しました。Windows Server 2022からのアップグレードインストールは、インストールの途中で「コンピューターに対する変更を元に戻しています...」となり、その後、「0xc00002e2」のSTOPエラーコードで起動失敗を繰り返すようになりました。Windows Server 2019からのアップグレードインストールも試してみましたが、こちらはアップグレードインストールが完了してWindows Server 2025のログイン(サインイン)画面まで表示されましたが、ログインしようとしても「コンピューターアカウントがありません」のエラーで認証が成功しない状態です(画面4)。いずれのケースも「ディレクトリサービス復元モード(DSRM)」で起動して解決を試みましたが、ドメインが存在しない状態を解消することはできていません。
画面4 ドメインコントローラーのインプレースアップグレードは、Windows Server 2022から(画面上)、Windows Server 2019から(画面下)のいずれも失敗
このインプレースアップグレードの問題が、私の環境固有のものか、再現可能な問題なのかは分かりませんが、もし、Windows Server 2025へのドメインのアップグレードを考えているのなら、より安全な「ローリングアップグレード」の方法をお勧めします。
2024.12.26追記:その後の調査により、アップグレード元のVMのイメージの問題(Sysprep済みVHDXイメージから展開したVM)である可能性が高いことが分かりました。新規インストールしたVMをドメインコントローラーにし、その後、インプレースアップグレードした場合は、この問題は発生しませんでした。私の個人のテスト環境にある、Windows Server 2016で導入し、Windows Server 2019、Windows Server 2022へとインプレースアップグレードしてきた環境も、問題なく、Windows Server 2025にインプレースアップグレードできています。 ドメインコントローラーのインプレースアップグレードが完了したら、ドメインの機能レベル、フォレストの機能レベルの順番で最上位の「Windows Server 2025(Windows2025Domain/Windows2025Forest)」機能レベルに昇格することで、以下に説明するActive Directoryの新機能を利用できるようになります。ドメインおよびフォレストの機能レベルの昇格は、「Active Directory管理センター」、「Active Directoryユーザーとコンピューター」、「Active Directoryドメインと信頼関係」、Set-ADDomainMode/Set-ADForestModeコマンドレットのいずれかで実行できます。 画面 ドメインコントローラーのアップグレード後、ドメイン/フォレストの機能レベルを最上位の機能レベル「Windows Server 2025」(Windows2025Domain/Windows2025Forest)に昇格する |
ドメインコントローラーのインプレースアップグレードは残念ながら失敗に終わったので、Windows Server 2025のActive Directoryの新機能を新規インストールした環境で確認しました。
前述したように、Windows Server 2016以降、長い間、フォレスト/ドメインの新しい機能レベル、つまり新機能は提供されませんでした。Windows Server 2025のActive Directoryには新しいフォレスト/ドメインの機能レベルとして「Windows Server 2025」(Windows2025Forest/Windows2025Domain)が追加されました(画面5)。
画面5 Windows Server 2025のサーバーを新規ドメインのドメインコントローラーとして昇格。新しいフォレスト/ドメインの機能レベル「Windows Server 2025」が追加されている
新しい機能レベル「Windows Server 2025」では、Windows Server 2025を実行するドメインコントローラーのみを使用でき、Active Directoryの新機能である「データベース32kページのオプション機能」を有効にすることができます。
Windows 2000 ServerでActive Directoryが初めて登場してからずっと、Active Directoryでは8kデータベースページサイズ(8kアーキテクチャ)が使用されていました。このアーキテクチャにより、Active Directoryのスケーラビリティが制限されていました。例えば、Active Directoryオブジェクトのサイズが8kバイトを超えることができないなどです。32kページサイズに移行することにより、複数値属性値が2.6倍(最大3,200個の値を保持可能)に増加するなど、スケーラビリティの制限が改善されます。
Windows Server 2025 の新機能: Active Directoryドメインサービス|Windows Server(Microft Learn)
互換性のために、フォレスト/ドメイン機能レベル「Windows Server 2025」で「データベース32kページのオプション機能」は既定で無効になっています。有効にするには、PowerShellで以下のスクリプトを実行します(画面6)。
$params = @{ Identity = 'Database 32k pages feature' Scope = 'ForestOrConfigurationSet' Server = 'ドメインコントローラーのコンピューター名' Target = 'ドメインのFQDN' } Enable-ADOptionalFeature @params Get-ADOptionalFeature -Identity "Database 32k pages feature" |
画面6 「Windows Server 2025」の新機能である32kページサイズを有効にする
この他にもWindows Server 2025のActive Directoryには改善点があります。例えば、従来、Active Directoryはグループ0のCPUのみを使用していましたが、Windows Server 2025のActive DirectoryではNUMA(Non-Uniform Memory Access)対応ハードウェアを利用できるようになり、64コアを超えて拡張でき、ハードウェア能力を最大限に生かすことができます。これは、32kページサイズ(新しい機能レベル)とは別のActive Directoryのスケーラビリティとパフォーマンスの改善点です。
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