
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.138 クライアントデバイスの構成|Microsoft Connected Cache for E/E 完全導入ガイド(7)
2025年09月18日配信
執筆者:山内 和朗
「Microsoft Connected Cache for Enterprise and Education(以下、Microsoft Connected Cache for E/E)」のキャッシュノードは、Windows 10以降のネイティブ機能である「配信の最適化(Delivery Optimization《DO》)」のキャッシュサーバーとして機能します。DOクライアントはWindows 10/11で既定で有効であり、キャッシュサーバーを指定するだけでMicrosoft Connected Cache for E/Eのキャッシュノードに動的にキャッシュされるコンテンツを確実かつ高速にダウンロードでき、企業や組織全体で使用されるMicrosoft CDNからのダウンロードトラフィックを大きく削減することに役立ちます。
Windowsの毎月の品質更新プログラム、年次の機能更新プログラムは、大きなダウンロードコンテンツを伴います。企業や組織では、更新プログラムのダウンロードにより、非常に多くのネットワークリソースが消費される場合があり、更新プログラムのダウンロードが集中すると、企業や組織のインターネットアクセスの帯域が逼迫する可能性があります。配信の最適化(DO)は、インターネットベースのサーバーであるMicrosoftのCDN(コンテンツ配信ネットワーク)(HTTPソース)に加えて、Windowsデバイスが必要に応じて代替ソースの利用を可能にします。Windows 10/11の既定では、NAT(ネットワークアドレス変換)の背後にあるローカルネットワーク上のWindowsデバイス間でピアツーピア(P2P)機能が有効になっています(画面1)。オプションで追加の代替ソースとしてMicrosoft Connected Cacheテクノロジに基づくキャッシュサーバーを指定することができます。
配信の最適化とは|Windows(Microsoft Learn)
画面1 Windows 10/11では「配信の最適化」がローカルネットワーク上のデバイス間(ピアツーピア機能)で既定で有効
配信の最適化(DO)は、インターネットから遮断されたクライアントデバイスにコンテンツを配信するものではありません。また、Microsoft Connected Cacheのキャッシュサーバーは、Microsoft CDNのコンテンツを事前にフィード(ダウンロード)してDOクライアントに提供するものでもありません。DOクライアントは、インターネットを介してMicrosoftのCDNにアクセスできる必要があります。Microsoft Connected Cacheのキャッシュサーバーは、クライアントからの要求がキャッシュに存在しない場合、クライアントに代わってMicrosoft CDNからコンテンツをダウンロードしてキャッシュを埋め、クライアントにコンテンツを提供します。次に同じコンテンツを要求したDOクライアントは、キャッシュサーバーから即座にコンテンツを取得できるため、Microsoft CDNからの多重なダウンロードが回避されます。また、ピアやキャッシュサーバーが利用できない場合、DOクライアントはMicrosoft CDNにフォールバックして、Microsoft CDNから直接コンテンツをダウンロードします。
DOクライアントのキャッシュサーバーは、グループポリシーやローカルコンピューターポリシー、レジストリ、Microsoft Intuneの構成ポリシー(配信の最適化)、MDMポリシーで構成することができます。Windows Server Update Services(WSUS)やMicrosoft Configuration Managerのクライアントの場合でも、更新プログラムや高速インストールファイルをMicrosoft Updateからダウンロードするオプションが有効になっている場合、キャッシュサーバーの恩恵を受けることができます。
グループポリシーのグループポリシーオブジェクト(GPO)(gpmc.msc、gpme.msc)やローカルコンピューターポリシー(Gpedit.msc)で配信の最適化(DO)クライアントのキャッシュサーバーを構成するには、次の場所にあるポリシーを設定します(画面2)。キャッシュサーバーは、Microsoft Connected Cache for E/EのLinuxまたはWindowsキャッシュノードをIPアドレスまたはFQDN(完全修飾ドメイン名)で1つまたは2つ以上(コンマ区切りで)設定することができます。FQDNは、クライアントから名前解決できる必要があります。
コンピューターの構成(\ポリシー)\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\配信の最適化 設定: キャッシュサーバーのホスト名: 有効 オプション: キャッシュサーバー: キャッシュサーバーのIPアドレスまたはFQDN |
キャッシュサーバーを指定した場合、Windows 10/11の既定ではピアとキャッシュサーバーの両方が並行して実行されます。ピアとキャッシュサーバーに優先順位は設定されていません。次のポリシーを構成すると、ピア機能をオフにすることができます。この設定は、「設定」アプリの「配信の最適化」で「他のデバイスからのダウンロードを許可する: オフ」の設定と同等です。
コンピューターの構成(\ポリシー)\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\配信の最適化 設定: ダウンロード モード: 有効 オプション: ダウンロード モード: HTTP のみ(0) |
画面2 グループポリシーやローカルコンピューターポリシーを編集して、キャッシュサーバーのIPアドレスまたはFQDNを指定する
レジストリの「HKEY_LOCAL_MACHINE¥SOFTWARE¥Policies¥Microsoft¥Windows¥DeliveryOptimization」キーに、REG_SZ(文字列値)型の「DOCacheHost」の値を作成し、値のデータとしてキャッシュサーバーのIPアドレスまたはFQDNを指定すると、上記ポリシー設定と同じ設定が可能です。例えば、キャッシュサーバーとして「192.160.0.104」を設定する場合は、コマンドプロンプト(管理者)またはPowerShell(管理者)で以下のコマンドラインを実行します(画面3)。
C:\> REG ADD HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\DeliveryOptimization /v DOCacheHost /t REG_SZ /d "192.168.0.104" /f |
DOクライアントのピア機能をオフにするには、REG_DWORD型の「DODownloadMode」値に「0」を設定します。
C:\> REG ADD HKLM\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows\DeliveryOptimization /v DODownloadMode /t REG_DWORD /d 0 /f |
画面3 REGコマンドを使用して、「DOCacheHost」値にLinuxまたはWindowsキャッシュノードのIPアドレスまたはFQDNを指定する
Microsoft Intuneを利用できる場合は、「Microsoft Intune管理センター」の「デバイスの管理|構成」を開き、「配信の最適化」に対応した構成ポリシーを作成して、クライアントデバイスを構成します。ポリシーのプロファイルとしてプラットフォーム「Windows 10以降」、プロファイルの種類「テンプレート」、テンプレート名「配信の最適化」配信を選択してポリシーを作成し、「DOキャッシュホスト」にLinuxまたはWindowsキャッシュノードのIPアドレスまたはFQDNを指定します(画面4)。
画面4 Microsoft Intuneの構成ポリシーを使用して、「DOキャッシュホスト」を構成する
DOクライアントのピア機能をオフにするには、「DOダウンロードモード」に「HTTPのみ、ピアリングなし(既定)/HTTPのみ、ピアリングなし(0)」を設定します。
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