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セイテクエンジニアのブログ  かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ  vol.78 Azure VMのインプレースアップグレードに挑戦(後編)|Windows Server 2025大特集(15)

 

 

vol.78 Azure VMのインプレースアップグレードに挑戦(後編)|Windows Server 2025大特集(15)

2025年01月27日配信
2025年04月22日更新
執筆者:山内 和朗

  前回(vol.77)は、以下のドキュメントの手順を、Windows Server 2025へのアップグレードに読み替えて、Windows Server 2022 Datacenterを実行するAzure仮想マシン(VM)のWindows Server 2025 Datacenterへのインプレースアップグレードに挑戦しました。

 

In-place upgrade for VMs running Windows Server in Azure|Azure(Microsoft Learn)
Azure で Windows Server を実行している VM のインプレース アップグレード|Azure(Microsoft Learn)

 

 しかし、「Working on updates 99%(更新プログラムを構成しています 99%)」の状態でスタックしてしまう状況が続き、Azure VMのコンソールにリモートデスクトップ接続する手段を失ってしまいました。しかし、前回の最後に画面を見ていただいたように、最終的にアップグレードは無事成功しました。Windows Server 2025へのインプレースアップグレードについてはドキュメントにまだ反映されていないため、サポートされない方法かもしれませんが、ご参考までに。

 

※ここに示したインプレースアップグレード失敗の問題や日本語化のさまざま問題は、1月または今後提供される更新されたアップグレードメディアディスクやAzureの更新されたWindows Server 2025イメージで解消される可能性があります。

 

VMのOSディスクをWindows Server 2022にロールバックする

 

 前回、万が一にもインプレースアップグレードに失敗したときに備えて、Azure VMまたはOSディスクのバックアップを作成しておく重要性を指摘しました。OSディスクのバックアップは、Azureの「スナップショット」機能、VMの「キャプチャ」機能、「Azure VM用Azure Backup」などで行えます。


 インプレースアップグレードに失敗し、正常起動できなくなったAzure VMは、いったん停止し、OSディスクをバックアップから戻します。例えば、スナップショットの場合は、OSディスクのスナップショットからマネージドディスクを作成し、Azure VMの「ディスク|OSディスクのスワップ」で現在のOSディスクを、スナップショットから作成したOSディスクと入れ替えます(画面1)。

 

画面1 OSディスクのスナップショットからマネージドディスクを作成し、「ディスク|OSディスクのスワップ」を使用して現在のOSディスクと入れ替える
画面1 OSディスクのスナップショットからマネージドディスクを作成し、「ディスク|OSディスクのスワップ」を使用して現在のOSディスクと入れ替える

 

Setup.exeに/imageindexパラメーターを追加して再挑戦、成功

 

 Azure VMが元のWindows Server 2022に戻ったら、前回と同様に、表示言語とシステムロケールを「English(United States)」に変更してから、VMのデータディスクとしてアタッチした「WindowsServer2025UpgradeDisk」(作成方法は前回を参照)の「Windows Server 2025」フォルダーから自動アップグレードのコマンドラインを指定して実行します。

 ドキュメントのコマンドラインは、次の1行ですが、これだと99%でスタックしてしまいます。もしかしたら辛抱が足りないのかもしれませんが、従量課金制のAzure VMではいつまでも待っていることなんてできません。

 

.\setup.exe /auto upgrade /dynamicupdate disable /eula accept

 

 実は、99%でスタックする問題は、物理サーバーのHyper-Vサーバーのインプレースアップグレードでも経験しました。失敗したのは、新しい「Windows Serverセットアップ」で対話的にインプレースアップグレードを実行したときでした。Setup.exeのパラメーターを指定して完全に自動アップグレードする方法に切り替えると、スタックすることなくアップグレードが成功しました。

vol.72 物理サーバーのインプレースアップグレード(失敗のち成功)|Windows Server 2025大特集(9)

 今回は、次のように「/imageindex 4」を追加してインストールイメージを指定することで、「Windows Server Setup」と対話なしで、アップグレードインストールを実行することができ、そして1時間ほどで成功しました(画面2)。なお、vol.72ではプロダクトキーもオプションで指定していますが、Azure VM用のアップグレードディスクメディアは、AzureのKMS(キー管理サービス)クライアントのキーが構成されているため、プロダクトキーは指定しないでください。「/imageindex」パラメーターを追加してもGUIは表示されますが、ユーザーの操作は全く不要です。GUIを非表示にするには、さらに「/Quiet」パラメーターを追加してください。

 

.\setup.exe /auto upgrade /dynamicupdate disable /eula accept /imageindex 4

 

画面2 Setup.exeに「/imageindex 4」パラメーター(4はWindows Server 2025 《Desktop Experience》)を指定して自動アップグレードすることでアップグレードに成功

画面2 Setup.exeに「/imageindex 4」パラメーター(4はWindows Server 2025 《Desktop Experience》)を指定して自動アップグレードすることでアップグレードに成功

 

カスタマイズ内容の引き継ぎと動作の確認

 

 今回アップグレードしたのは、このブログの「ラボ環境 on Azureを作る」シリーズ(vol.13~)のAzure VMです。サーバーの役割として「Hyper-V」と「DHCPサーバー」をインストールしています。Hyper-VやDHCPサーバーのカスタマイズした内容、例えば、VMやVHDXの保存先パス、ネットワークアドレス変換(NAT)対応の内部仮想ネットワークスイッチ、DHCPスコープ、スコープオプション(vol.17を参照)などはサーバーの役割とともにすべて引き継がれていました。ただし、DHCPサーバーについては、「サーバーマネージャー」に通知された「Complete DHCP configuration(DHCP構成を完了する)」(前出の画面2)を実行して、「Commit(コミット)」操作をする必要がありました。


 現在、このAzure VMにHyper-V VMは1つも作成していません。アップグレード前にVMが存在していた場合は、「構成バージョンのアップグレード」を実行して、最新のバージョン「12.0」にアップグレードします。なお、旧バージョンのHyper-V環境にVMを移動する可能性がある場合は、構成バージョンのアップグレードは実行しないでください。

 このAzure VMでは、Windows Subsystem for Linux 2(WSL 2)で構築したテスト用メール環境を構築済みです(vol.23を参照)。その環境も、アップグレード後に引き継がれ、問題なく動作することを確認しました(画面3)。テスト用メール環境がWindows Server 2025でも問題なく機能することは、以下のフォローアップ記事で書いたように確認済みです。

 

メモ. “テストメール環境 on WSL 2” on Windows Server 2025|過去記事フォローアップ

画面3 テスト用メール環境は、Windows Server 2025にアップグレード後も引き続き利用可能
画面3 テスト用メール環境は、Windows Server 2025にアップグレード後も引き続き利用可能

 

現状、Azure VMのWindows Server 2025日本語化は、一筋縄ではいかない

 

 このブログの以下の回で説明したように、現状、Azure VMのWindows Server 2025英語版を従来の方法で日本語化すると、「サーバーマネージャー」など英語表示のものが残る、「設定(Settings)」アプリが英語のままで、表示が乱れる、Sysprepによるイメージの一般化に失敗する、といった問題に直面するでしょう。Azure VM用のアップグレードディスクを使用したインプレースアップグレード後の環境でも、同様の問題が発生します。ちなみに、製品版のWindows Server 2025英語版の日本語化では、そのような問題は発生しません。

vol.65 Windows Server 2025をAzureで評価する|Windows Server 2025大特集(2)
メモ. Azure VMのWindows Server 2025日本語化問題を自分で何とかする|Windowsトラブル解決
メモ. Azure VMのWindows Server 2025を日本語化するとSysprepに失敗する|Windowsトラブル解決

 今回は、上記の回の経験を踏まえ、次の手順で日本語化しました。

 インプレースアップグレード後に「Settings」アプリの「Times and language」の「Language and region」を開くと、「Japanese」の言語パックなどがインストール済みのように見えます。しかし、表示言語を「Japanese」に変更することはできませんでした。また、追加で「日本語/Japanese」インストールすることもできません(画面4)。ここでは「Japanese」を選択して「Remove」をクリックし、アンインストールしておきます。

 

画面4 インプレースアップグレード後に「Japanese」は追加されているように見えるが、表示言語を切り替えられないため、いったん削除する
画面4 インプレースアップグレード後に「Japanese」は追加されているように見えるが、表示言語を切り替えられないため、いったん削除する

 続いて、「LpkSetup.exe」を実行して、オフラインインストール用の言語パックとオプション機能のISOメディア(Visual StudioサブスクリプションやMicrosoft 365管理センターから入手可能)から、日本語言語パック「Microsoft-Windows-Server-Language-Pack_x64_ja-jp.cab」をインストールし、Windowsを再起動します(画面5)。

 

画面5 「LpkSetup.exe」を使用して、オフラインインストール用の日本語言語パックをインストールする
画面5 「LpkSetup.exe」を使用して、オフラインインストール用の日本語言語パックをインストールする

 「Settings」アプリの「Times and language」の「Language and region」で表示言語を「日本語/Japanese」に切り替え、リモートデスクトップ接続をサインアウト/サインインします。また、オプションで「地域」コントロールパネル(intl.cpl)の「管理」タブを開き、「設定のコピー」をクリックして、ようこそ画面と新しいユーザーアカウントに現在のユーザーの言語設定をコピーします。さらに、「システムロケールの変更」をクリックして、システムロケールを「日本語(日本)」に変更します。

 これで「サーバーマネージャー」などの表示は日本語に切り替わります。しかし、「Settings」アプリは英語表示のままですし、一部の表示が乱れて操作不能のものもあります(Windows Updateの「Check for updates」が表示されないなど)。この問題は、「Sconfigユーティリティ」の「6) 更新プログラムのインストール」を使用して、最新の品質更新プログラムをインストールし、Windowsを再起動することで解消します(画面6)。

 

画面6 「Settings」アプリの日本語化、正常化は、Sconfigユーティリティで最新の品質更新プログラムをインストールすることで解消
画面6 「Settings」アプリの日本語化、正常化は、Sconfigユーティリティで最新の品質更新プログラムをインストールすることで解消

 なお、Azure VMのWindowsゲストをインプレースアップグレードをした場合、AzureポータルのVMプロパティは更新されず、発行元、オファー、プラインなどのソースイメージ情報はアップグレード前のWindows Server 2022の情報のままであることに注意してください。これは正常な挙動です。アップグレードによる変更はOSディスク内にのみ反映されます(画面7)。

 

画面7 Azure VMのインプレースアップグレード後のWindows Server 2025の完全な日本語化に成功。VMプロパティのソースイメージ情報は更新されないことに注意
画面7 Azure VMのインプレースアップグレード後のWindows Server 2025の完全な日本語化に成功。VMプロパティのソースイメージ情報は更新されないことに注意

 

残すはオンプレのラボ環境のアップグレードのみ

 

 会社支給のノートPC(Windows 11バージョン24H2にアップデート済み)以外の私の作業環境は、業務外で使用する私用の物理サーバー、業務で使用するAzure上のラボ環境、そして、オンプレミスの物理サーバー上に構築したラボ環境です。これまでに、私用の物理サーバーとAzure上のラボ環境はWindows Server 2022からWindows Server 2025にアップグレードできました。どちらも、失敗、回復、再試行でのアップグレードでした。

 

 残すはオンプレミスのラボ環境だけになります。オンプレミスの物理サーバーは、物理的セキュリティ確保のため、Azureと同様、原則としてリモートデスクトップ接続以外に接続手段がない環境です。これまでの失敗の経験を生かして、1回の挑戦で成功させたいと思っています。

 

Windows Server 2025大特集(1)|...|(14)|(15)

 

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