
かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ
セイテクエンジニアのブログ かつて山市良と呼ばれたおじさんのブログ vol.85 最終目標、オンプレ・ラボ環境の移行|Windows Server 2025大特集(22)
2025年02月20日配信
2025年04月22日更新
執筆者:山内 和朗
昨年11月末に始まったこの「Windows Server 2025大特集」シリーズですが、最後にオンプレミスのラボ環境(Windows Server 2022 Hyper-Vベースの評価用物理サーバー環境)をWindows Server 2025にアップグレードして、ひとまず完結したいと思います。最初に言っておきますが、インプレースアップグレードは一発成功で、何の問題もなく最新のOS環境に移行することができました。
このシリーズの最後は、「ラボ環境 in オンプレを作る」シリーズ(vol.33~vol.40)でオンプレミスに構築したWindows Server 2022 Hyper-Vベースのラボ環境の、Windows Server 2025へのアップグレードです。今回は、Windows Server 2022 Standardを実行するサーバールーム内の物理サーバーを、Windows Server 2025 Datacenterにインプレースアップグレードします。サーバールームは入退室の管理が厳しく、リモートKVM環境は残念ながら今回は利用できません(利用環境がありません)。失敗時の入出手続きについては事前に確認してありますが、できればすべてをリモートデスクトップ(RDP)接続で完結できればと思います。そのためにこれまで、Hyper-V仮想マシン(VM)、別の物理サーバー、Azure VMでインプレースアップグレードの経験を積み重ねてきました。StandardからDatacenterへのHyper-Vサーバーのインプレースアップグレードについても、VM環境で確認済みです。
vol.66 旧バージョンからのアップグレード(Hyper-Vサーバー編)|Windows Server 2025大特集(3)
vol.72 物理サーバーのインプレースアップグレード(失敗のち成功)|Windows Server 2025大特集(9)
vol.77 Azure VMのインプレースアップグレードに挑戦(前編)|Windows Server 2025大特集(14)
vol.78 Azure VMのインプレースアップグレードに挑戦(後編)|Windows Server 2025大特集(15)
メモ. “テストメール環境 on WSL 2” on Windows Server 2025|過去記事フォローアップ
今回のターゲットとなる物理サーバーは、「Windows Serverバックアップ」を使用して毎日(平日のみ)業務時間外に、スケジュールバックアップをしています。バックアップ対象はベアメタル回復用システムイメージ、一部の仮想マシン(VM)、および「Hyper-V Component」で、バックアップ専用のローカルディスクにディスク・ツー・ディスクでバックアップしています。一部のVMについては、Azure Backupを使用してクラウドへのバックアップも行っています。そのため、アップグレードに失敗しても、ローカルディスク内のバックアップからシステムを復元でき、重要なVMについてはローカルまたはクラウドから復元できます。
しかしながら、ローカルディスクのバックアップが万が一利用不能になることに備えて、社内の共有フォルダー(SMB共有)に対しても最新のベアメタル回復用システムイメージをバックアップしておきました(画面1)。万が一のときの備えは、複数あることに越したことはありません。
画面1 アップグレード前に、ベアメタル回復用のシステムイメージをSMB共有に作成(アップグレード成功したら不要なので削除)
物理サーバーのアップグレードの場合、Windows Server 2025のシステム要件を満たしているかどうか、必ず確認しておきましょう。1月21日に開催したオンラインセミナー「セイテク・シス管道場 第3回」でも説明しましたが、CPU要件に命令、命令セットの要件が、Windows Sever 2025でいくつか追加されています(画面2)。そして、CPU要件を満たしているかどうかは、Windows SysinternalsのCoreinfoツールを使用して確認することができます。
【アーカイブ】セイテク・シス管道場 第3回 評価から始めよう! Windows Server 2025~インストール/アップグレード&トラブル解決~
Coreinfo|Sysinternals(Microsoft Learn)
Coreinifoの直接ダウンロードリンク(live.sysinternals.com)
画面2 セイテク・シス管道場 第3回のプレゼンテーションより
サーバーハードウェアのメーカーが公開しているWindows Server 2025のサポート状況も確認しました。使用しているメーカーのサポート予定のモデルはその時点ですべて「確認中」のステータスでした。一つ不安要素があるとすれば、使用している物理サーバーのモデルが、サポート予定のリストに含まれないことです。つまり、Windows Server 2025の正式サポートの予定がないモデルということになるため、今後、メーカーのサポートは制限される可能性がありますが、検証用のサーバーなので自己責任で進めたいと思います。
これまでの経験上、インプレースアップグレードに失敗したこともありましたが、最終的にはどの環境も成功しています。その経験を踏まえ、成功率の高かった「setup.exe」のコマンドラインオプションを使用して、自動アップグレードを行うことにしました。ISOファイルをダブルクリックしてローカルドライブにマウントし、以下のコマンドラインを実行してアップグレードインストールが完了するまで待ちます(画面3、画面4、画面5、画面6)。
.\setup.exe /auto upgrade /dynamicupdate disable /eula accept /pkey XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX /imageindex 4 |
なお、「XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX-XXXXX」はWindows Server 2025のプロダクトキー、「/imageindex 4」は「Windows Server 2025デスクトップエクスペリエンス」の指定です。ちなみに、「/imageindex 1」は「Windows Server 2025 Standard(Server Coreインストール)」、「/imageindex 2」は「Windows Server 2025 Standardデスクトップエクスペリエンス」、「/imageindex 3」は「Windows Server 2025 Standard(Server Coreインストール)」です。なお、異なるエディションへのインプレースアップグレードはサポートされますが、インストールの種類(Server Coreインストールとデスクトップエクスペリエンス)は同じである必要があります。
画面3 「Setup.exe」を使用して自動アップグレードを開始する。GUIは表示されるが、さらに「/Quiet」オプションを指定すれば非表示にできる
画面4 「Setup.exe」のオプション指定により、GUIと対話することなく、インストールが始まる。この後、RDPセッションは切断
画面5 サーバールーム内に設置された物理サーバーのローカルコンソールを見ることはできないので、pingコマンドを実行して、応答が返ってくるのを気長に待つ(祈る)。99%でスタックした過去の例の場合、pingの応答はあってもRDP接続が成功することはなかった。ローカルコンソール(またはリモートKVM環境)にアクセスできない限り、その状況を知る術はない
画面6 再起動後、20分程経過した後、RDP接続できるようになり、Windows Server 2025 Datacenterにアップグレードされたことを確認できた
アップグレード完了直後のOSリビジョン.ビルドは、「26100.1742」でした。これは昨年11月の一般提供(GA)リリース時のISOファイルを使用し*1、「/dynamicupdate disable」オプションを指定したからでしょう。すぐにWindows Updateを実行して、最新の(1月の)品質更新プログラムをインストールしました。また、「デバイスマネージャー」「イベントビューアー」「ディスクの管理」「サーバーマネージャー」などを確認し、デバイスのエラーや重大なイベントが記録されていないかどうか、記憶域スペースにエラーが出ていないかどうかを確認しました。また、すべてのVMを起動して、問題がないことを確認しました。さらに、翌日にローカルとクラウドへのバックアップジョブが正常に行わていることを確認しました。
アップグレード後もすべて問題なく動作しているようなので、VMの構成バージョンをWindows Server 2022 Hyper-Vの既定の「10.0」から最新でWindows Server 2025 Hyper-Vの既定の「12.0」にアップグレードし(画面7)、ラボ環境に導入済みのWindows Subsystem for Linux(WSL)2上に構築したテスト用メール環境の動作確認をして、一連のアップグレード作業は完了しました。
*1 この記事の執筆時点では更新されたISOメディアの提供はありませんでした。記事の公開時点では、2025年2月に更新されたISOイメージ(updated Feb2025、OSビルド26100.3194)が利用可能になっています。
画面7 アップグレード後、すべてが正常であることを確認した上で、すべてのVMの構成バージョンを最新で、Windows Server 2025 Hyper-V既定の「12.0」にアップグレードする
以上で、Windows Server 2025について集中的に取り上げてきたこの連載シリーズは完結です。今後、Windows Server 2025に関してお伝えしたいことが見つかりましたら、その都度、連載で取り上げたいと思います。